浮気彼氏から奪うオトコ。







「俺のために、オシャレしてくれたんだよね?」



ドキッとした。

功クンの手のひらは、あたしの頬に触れていた。




「…期待しても……いいのかなぁ?」


弱々しく言った彼は、くしゃりと顔をゆがめて、泣きそうだった。

あたしが功クンを呼ぼうとしたとき、手を握り締められていた。


「俺ってば図々しいな。じゃあ楽しもうよ」





あたしはつい、功クンの服を引っ張っていた。



「功クンのためにしたんだよ……」

「へ?」

「オシャレ…」




恥ずかしくてあんまり言った事がないけど、素直に言うとすっきりした。




「…そういうの本当にずるい」



握られた手のひらが、少しだけ温かくて。あたしまで体温が移りそうだった。