―「……なんだよ。妃鞠…俺から離れちまうのか…?
俺から…逃げちゃうのかよ…?」
あの弱そうに見せたのは、嘘なはずがない…。
―「でも、俺は妃鞠だけは渡さない」
あたしだけは、そう言ってくれたよね…?
あんなにも傷ついたように言うのは、例え演技でも…。
「あはは…やっぱ信じちゃうよ」
「…妃鞠」
「柚希ぃ……あたし傷ついても、彼の傍にいたいよぉ…」
涙がぼろぼろと溢れ出した。
柚希を困らせないように、ずっと耐えていたけれど。
「…馬鹿な妃鞠……。
離れなきゃ分からないことだってあるんだよ…」
そっと柚希が抱きしめてくれた。
柚希って身体が細いのに、力強くて温かい。
あたしの大好きな親友の体温は、何1つ変わらなかった。

