そんなあたしを見た蒼斗クンは、苦笑するしかなかった。
家の前に着くと、お父さんは険悪な表情を浮かべていた。
「…おい、妃鞠。アイツとの婚約はなんだったんだ?」
「あ。あのね…」
「本命のオトコがいるなら、ソイツ一本にしろよ」
呆れているお父さんを見て、何も言い返せなくなる。
すると家の奥から廣クンが現れた。
「妃鞠はずっと一途だったぜ?」
「え?」
「俺と婚約するの決めたとき、あんま幸せそうじゃねぇし…。
それに困ってた。
だから心ン中では、そのオトコが好きだったんだよ」
「じゃあ何で、婚約なんかしたんだ!」
少し怒ったお父さんは、あたしを見つめていた。
「そうでもしなくちゃ、蒼斗クンに会えない気がして…」

