部屋の布団で寝転んでいたお父さんは、あたしを見るなり悲しげな表情だった。


「もう…婚約したのか」

「そうだよ。あたしももう、子供じゃないんだ」

「何でだ?」

「え?」

「好きでもない男と一緒にいるんだぞ?おかしいと思わないのか?」

「まぁ…はたから見れば、変な話でしょ?

でもあたしと廣クンは1度付き合っているの。

別れてから、あたしは寂しかった。ずっと廣クンの面影を探していたんだ」


「…そうか」



懐かしいお父さんの愛用していた椅子に座ると、話を続けた。


「永遠の好きなんてないのかと思ってた。

でも…どこか廣クンのこと、忘れられなくて。

気づいたら、また好きになりそうなの」



「ならなかったらどうする?」



今思い浮かぶのは、廣クンの姿。

意地悪で素直じゃない廣クンだけど、あたしの事を一番に思ってくれていた。