名札を見せると廣クンは頷いていた。
「覚えてるに決まってるだろ?
あんとき妃鞠は、すっげぇ泣いてたしな」
「それは余計な思い出だよ」
いるものといらないものを区別していく。
「なぁ」
「ん?」
「妃鞠のお父さん、今頃泣いてんじゃねぇ?」
「えぇ?」
「いつもは優しいじゃねぇか。なのに俺が家に来た途端に、態度変えたし」
「…まぁあたし達がまだ、16歳だからじゃない?」
「もう17だけどな」
廣クンはあたしのベッドに座ると、うんと背伸びをした。
「明日行っちゃうんだろ?何か話せよ」
「そうだね。じゃあ待ってて」
あたしは部屋を急いで出ると、お父さんの部屋をノックした。

