椅子から立ち上がったお父さんは、前よりも老けて見えた。

若々しさが自慢だったはずなのに―…。


「2人は付き合っているのかい?」

「…それは」



あたしが口を濁すと、廣クンは迷わず首を横に振った。


「俺等は1度別れ、今片思いをしているんです」

「それじゃあ妃鞠は結婚を望んでいないんだな?」


お父さんがあたしに視線を向ける。

あたしは廣クンの手を強く握った。



「ううん、望んでいる。廣クン以上にあたしを幸せにしてくれる人。

他にはいないんだから」


「はぁ…馬鹿なのか?そんなので結婚だと?

愛し合っているわけではないのに?お父さんは反対だ」


冷たい言葉と態度。

こんなお父さんは初めて見る。



「…愛し合っていないなら、今から愛し合えばいいんです。

俺が必ず、妃鞠を振り向かせる」