―俺だけ。

今の廣クンの気持ちには、何にも答えられない。



「…なぁ妃鞠」

「?」

「見ろよ、この景色」



廣クンはどこかを指差した。

あたしはそっちに視線を向けると、懐かしい景色が目に飛び込んだ。


「ここって…」

「俺等がいつも夏祭りに来る、花火が一番見やすい隠れ場所」


崖の上に大きな木があるところで、小さな花がとても綺麗な場所。

それに昔から廣クンと来るから、大切な場所だった。




「俺はこの場所が好きだった。小さい頃、母さんが家を出る前まで」

「…」


「浮気する母さんを見れば、誰だって真似するだろ?

俺も浮気を重ねれば、オンナの気持ちは分かるし、失敗だってなくなると思ってた」