そして自分の病室に入った瞬間、そっと後ろから抱きしめられた。
「…何で2人きりなんてさせたんだよ」
「……かのんは蒼斗クンが大好きなの。
それはきっとあたしよりも…」
蒼斗クンは、いつも傍にいてくれた。
当たり前のようにいてくれた。
「お前…その気持ちは」
「…言わないで」
このもやもやした気持ちなんて、知りたくない。
気づきたくない。
「言ったでしょ?後1年待って、って」
「…それが妃鞠にとって、幸せなのかよ。
俺は無理して、自分の気持ちを押し殺している妃鞠なんて見たくねぇよ」
「やめてよ…」
「逃げるんじゃねぇ。妃鞠」
「…逃げてないもん」
廣クンは、あたしよりも直感が鋭い。
誤魔化したって無駄なんだろうけど。
「この気持ちは…気づきたくないんだよ」
それ以上、あたしも廣クンも何も言わなかった。

