蒼斗クンの視線が、あたしの後ろを見つめていて、唖然としていたから。
あたしも振り返ると、そこには彼女がいた。
「…あ。お邪魔だったかなぁ」
その後ろで、廣クンが止めようとしていた。
あたしはそっと蒼斗クンから離れると、彼女の傍に行った。
「……話さないと後悔するよ?」
「…妃鞠」
「かのん、頑張れ」
まだ自分の恋が、誰に向かっているのかすら分かっていないのに。
彼女に蒼斗クンを渡していた。
「…」
病室を出て閉めると、視線が床へと落ちていく。
「妃鞠。今日は退院なんだろ?無茶すんなよ」
「…ん」
自分の病室に向かうと、廣クンも着いてきた。

