浮気彼氏から奪うオトコ。







あたしは涙でぐちゃぐちゃの顔で、蒼斗クンを見つめる。

彼の指先があたしの涙を拭ってくれた。



「ありがとう」

「あたしなんて何も…」



―何もしていないんだよ。

そう言いたかったのに、また涙が溢れる。

それを見て苦笑した蒼斗クンは、ふわっと抱き寄せた。



「…目が覚めたら病室にいて、結構不安だったんだ。

それに真夜中だったし。

朝まで不安のまま、待っていたら…君が来てくれた」


にこっと微笑む蒼斗クンに、どうしようもない自分がいた。


―別れるなんて、言えるんだろうか。

―廣クンの時だって、中々言えなかった。

―…別れたら蒼斗クンは離れてしまう。



―それが何よりも怖い……。


あたしの恋が、揺れ動いて、どうしようもない自分が消えないことが分かった。