浮気彼氏から奪うオトコ。






病院を出たところで、彼女はそう言った。


「私と一緒にいた頃の蒼斗は、まだヤンチャさんでね…。

でも優しかったの」


「…はい」


「去年までずっと一緒にいたんだぁ…。

誰よりも蒼斗のことは知ってるって、自慢できるくらいに」


近くにあったベンチに腰を下ろした彼女は、

あたしを隣に呼んだ。



言われた通り、隣に座ると、また話し始めた。



「付き合い始めて…色々知ったの。

付き合うことの幸せと不安。嫉妬ばかりしちゃってさ」


ふと廣クンのことを思い出してしまう。

嫉妬ばかりで、浮気を重ねる彼に、ずっと不安だけだった。



でも確かに、幸せはあった―…。



「蒼斗といると幸せだ…って、そう思って不安なんて消していたのに…」