浮気彼氏から奪うオトコ。






黒い髪は腰まで伸びていて、ゆっくりと振り返った。


まだ若いから、同い年に見える。


「…誰ですか」

あたしが聞くと、彼女が泣いていることに気づいた。


「……もしかして」

信じたくない人が目の前にいて、戸惑ってしまう。




「…貴方が蒼斗の彼女さん?」



その表情には、重々しい面影が見える。


「はい…、貴方は蒼斗クンの元カノですか?」


彼女が頷いたのを見て、何も言えなくなった。


「…ちょっと話を聞いてくれないですか?」


彼女があたしに助けを求めているのに気づいて、

蒼斗クンの病室を一緒に出た。



「…蒼斗。前よりも表情が穏やかになっていたんだ」