深く頷いた廣クンは、あたしと視線が重なる。
「分かった」
「どこに行っちゃうの?」
「ん?」
「廣クンが遠のいていく気がするの…」
「いかねぇよ、どこにも」
「…本当に?」
疑うように見つめると、廣クンはくしゃりと顔をゆがめた。
「彼女が生きているかもしれねぇんだ」
「…え」
「それも記憶喪失なんだよ。だから…それを利用して、付き合った最低な男がいる」
「そんな…」
「最低な男の影に隠れる彼女を、俺等が探し出したとして。
ソイツの記憶を無理に戻させるわけにはいかねぇ。
でも…アイツは会いたいだろうな」
「蒼斗クン…会いたいに決まってるよ」

