浮気彼氏から奪うオトコ。







でも、と付け加えた廣クンは、あたしをまっすぐに見つめていた。

「妃鞠のせいじゃねぇよ…」

優しい声がそっと、あたしの心に響いていく。



そして涙がどんどん溢れ出た。



「っ…、あたしが……悪いの」


前を向くように、ちゃんと言っていれば。

メールをもっと早くしていれば、蒼斗クンだって振り向かなかった。


「ちげぇよ…、相手の車が余所見していて、アイツはそれに気づいたんだ。

だから妃鞠を庇った。

それだけなんだ」

「…あたしなんて庇わなくても」

「……妃鞠以上に、アイツの命は大事じゃなかったんだよ」



廣クンがあたしの頭を、そっと自分の胸に抱き寄せた。



「…妃鞠は悪くねぇ。これは事故なんだ」

「……蒼斗クンがもし、死んじゃったら……」



そう思うと怖くて、涙が止まらない。