浮気彼氏から奪うオトコ。






「……?」

「あっ、妃鞠ぃ…」


ぼんやりとした視界の中、柚希が泣いていた。

あたしは身体を起こすと、小さく俯いた。


「ここは…」

「病院よ…」

「蒼斗…クンは?」

「…寝ているわ」


重い空気の中、柚希の隣に視線を向ける。

そこには廣クンがいた。


「……柚希。ちょっと妃鞠と2人にさせてくれ」

「えぇ分かったわ。変なことしたら許さないわ」

「しねぇよ…」



柚希が病室を出て行くと、廣クンが椅子に座った。

そっとあたしの頬に、廣クンの指先が触れる。



「……アイツ、意識不明なんだ」

「…」


あの光景が何度も目の前に映ってしまう。