浮気彼氏から奪うオトコ。






「ねぇ妃鞠ちゃん?」


不意にあたしの名前を呼んだ蒼斗クンは、

そっと手を握ってきた。



「全部落ち着いたら話があるんだ」

「全部―…?」

「うん。全部。その時妃鞠ちゃんは、絶対に幸せになっているはずだから」

「あたしが幸せになったときに、その話をしてくれるの?」

「そうそう。その時聞いて欲しいんだ」

「今じゃダメなの?」


どうして今はダメで、未来はいいんだろうか。

あたしは分からずに聞くと、蒼斗クンの瞳は揺れていた。



「今、まだ何も終わっていないし。

今話すべきことじゃないと思うんだ」


「そ、か…」

「落ち込まないでよ。いつかは分かるんだから」



そして蒼斗クンがゆっくりと立ち上がって、あたしの手を引いた。


「バイクに乗って」