「行かないよ。妃鞠ちゃんが不安定なまま、置いていかないよ」
「よかった」
「まぁ…あの人とよりを戻せば、別の話だけどね」
「え?」
「ううん、なんでもない」
あたしはまだ蒼斗クンの異変に気づけなかった。
いつも笑顔で大事な話を流してしまうから。
「帰ろうか、学校に。君の気になる人が心配してる」
「……どうだろうね」
「抱きしめられたの?」
「っへ?」
唐突に言われて驚くと、蒼斗クンはへらっと笑っていた。
「分かりやすいね」
「もう!知ってたなら言ってよ!」
「妃鞠ちゃんが言いたくなさそうだったからね」
蒼斗クンは、あたしの心をいつも見透かしている。
悔しくて睨むと、蒼斗クンはぼんやりと空を見ていた。

