たどり着いたのは、蒼斗クンが好きな丘だった。 「やっぱここは風があって気持ちいいねぇ」 見とれるほどの景色についため息が零れる。 「妃鞠ちゃん」 「ん?」 バイクから下りると、蒼斗クンは少しだけ深刻そうにしていた。 「何?」 「…聞いて欲しいことがあるんだ」 「聞いて欲しいこと?」 「うん」 何故だか空気が重い。 どうしたらいいのか分からず、ただ蒼斗クンの言葉を待った。 「いるかも知れないんだ」 「誰が?」 「俺の元カノが…」 その言葉に、嫌な予感が的中していた。