「……浮気するつもりなんてなかったけど。
妃鞠の前だと嫉妬させたくなっちまう…」
また傷つけることになるんだろうか。
傷ついたとき、きっと「アイツ」は傍にいたんだろう。
そう思うと、胸が締め付けられる。
「肝心なときにいっつも、俺は傍にいねぇし…。
妃鞠を悩ませる原因は俺なんだし…」
―全く、最低なヤツだな。俺は…。
「優しく出来るかわかんねぇけど…」
涙をまた一筋流す妃鞠に、優しく額にキスを落とす。
「ぜってぇ、俺のところに戻って来いよ…」
切実な俺の願いを呟いて、そっと部屋を後にした。
ドアの前では、妃鞠の母さんがまた泣きそうな表情で俺を見ていた。

