少しイラつく。
妃鞠が別の男なんて…。
(まぁでも、今から…奪えば…)
「廣クン…傍にいてよ……。どうして浮気…」
妃鞠は口を動かしながら、涙を流し始めた。
そっと瞳が開いて、少しだけドキッとする。
「どして……?」
―浮気する理由なんて言えば、かっこ悪いだろ…。
俺は虚ろな目をしている妃鞠の近くに寄り添った。
「浮気なんてしねぇよ…」
その時、一瞬だけ妃鞠は幸せそうに微笑んで、また瞳を閉じていった。
「…ったく。俺の気も知らないで…。
無防備な格好されて、そんな表情までされたら…俺もたねぇかも」
きゅっと自分の手のひらを握ると、震えていた。

