「妃鞠に…会いに来ました」
「……見れば分かるわよ!学校を抜け出してきてっ」
小さい頃から俺を、息子のように叱ってくれた唯一の存在。
俺は少しだけありがたかった。
叱ってくれる人なんて、妃鞠と妃鞠のお母さんしかいなかったのだから。
「あの子は寝ているし…、起きたら悲しませるかもよ?」
「それでも…最後かも知れないで。伝えたいんです」
「そんなにあの子が好き?」
俺はずっと遠回りをして、妃鞠を傷つけたんだ。
だったらもう―…、そんなことする必要はない。
「好きなんかじゃ言い足りないですよ。大好きです」
恥ずかしかったけど、ちゃんと言えたことはすっきりした。
すると妃鞠の母親は、泣きそうだった。
「貴方みたいにまっすぐな人に愛されて…妃鞠は幸せ者ね」
そして家に上がらせてもらった。

