ジリジリジリジリジリジリジリ




「…んー…」




容赦ない目覚まし時計の音に、沙耶は目を瞑ったまま、頭上にあるだろう本体を手で探る。


固いブリキの感触がしたのを確認すると、アラームを止めた。





今朝はうっすらと、寒い。



沙耶は、レースだけのカーテンは春と秋だけは良いが、これから冬になるにつれて、冷気が防げなくなるのではと、寝ぼけた頭で不安になった。




そして、はたと思い当たる。



そういえば、ここに住むのも、もうあと少しなのだ、と。





「!」





勢い良く起き上がった沙耶は、襖の前に並べてある紙袋達に目をやった。






「…ある…」




急に冴え始めた目は、しっかりと事実を確認した。




「……姉ちゃん…朝からうるせぇ…」




起こしてしまったようで、隣で、時計の音では決して目を覚まさない弟、駿が、ふぁぁと気だるそうな欠伸をしながら呟く。




「~~~~!!」




バキ、という音と共に、駿の声なき悲鳴が上がった。



―夢じゃなかったのか。



掌をグーにしたまま、沙耶はまだ、行儀良く並ぶ紙袋から視線を放さなかった。