もう少しでアパートに着く頃。


沙耶は携帯を耳に当てながら歩いていた。



―時間帯が悪いかな。出ないかな。



沙耶が失敗したかと考えていると、呼び出し音が止んだ。



「っ、もしもしっあゆみ!?」



思わず叫ぶと、あゆみが苦笑したのがわかる。




≪どうしたの?超うるさいんだけどー。≫



いつもと変わらないあゆみの様子にほっとした。



「あ、あのさ…」




≪そうだ、こないだは私の代わりに出てくれて、本当にありがとね!電話しなくちゃと思ってたんだけど中々できなくってねー!≫



さっき起きたばかりのことを、どうやって伝えようか、もしかしたらあゆみはとっくにクビを切られているかもしれない、と考えていた沙耶は拍子抜けする。




「え…いや、あの…何か、聞いてない?」





≪え?何が?≫




「その、、、えっと、、仕事、できてなかった、とか…」



―言いづらい。



沙耶は軽く冷や汗をかいていた。





≪私明日から出勤だから、さっき連絡したけど…沙耶のことすっごく褒めてたよ?≫



「え?!」



≪何驚いてるのよ。私も沙耶はイチオシですから!って鼻高かったわ
ー≫



あゆみの言っている事が信じられず、沙耶は激しく動揺する。