Trick or Treat?






「ゆ、らくん……!」


「……」


「い、痛い……、腕痛い、から」


ずんずん歩いて行く由良くんは、私の腕を離すどころかますます掴む力が強くなっていく。


痛さに、顔を歪めながら私がそういうと、ぴたりと由良くんが立ち止まる。


「……由良くん……?」

「……笹川は、さ」


そこまで言いかけて、言葉を飲み込んだ。

そして、由良くんはすぐ近くの教室のドアを開けるとそのまま、私を壁に押し付ける。


電気もついていない、真っ暗な教室の中で由良くんの白い肌だけが、浮いて見える。

何も言わないで、顔を伏せたままの由良くん。


目の前に、彼の漆黒に溶けてしまいそうなほど黒い髪があった。


「お前は、」


「……」


「俺の、ものだから」