部屋の掃除をして、玄関の鍵をしめた。
車にダンボールをつみ剛くんの家へ向かった。
2LDKの綺麗なマンション。必要最低限しかない部屋。
「花ちゃんが来ると思って急いで掃除したよぉ」
「そうなの?生活感がないからお家にあんまりいないんだとおもった」
「仕事とかよく部屋でするから書類とか散らばってたり掃除もできないから洗濯物ためちゃったり、空き缶とかほったらかしになっちゃうよ」
「なんか意外。けどこれからはお世話になるわけだし私が掃除するね?けど、必要なものはちゃんとしまっておいて?」
「助かるよ。できるだけ散らかさないようにきをつけます。」
「ふふ、剛くんの家だから私に気つかわないでね?」
「ありがと。一応ね、部屋なんだけど」
二つあるうちの一つの部屋が私の部屋になるらしく、6畳くらいの申し分ない広さだった。クローゼットに服やバッグを治し、ダンボールを立たんでリビングに向かった。
白と黒が基調な部屋。モデルルームみたいだった。
「花ちゃん買い物いこうか」
「うん、ありがと」
少し離れたショッピングモールへいき私の生活用品を揃えた。
帰りに食材を買い、家に帰ると夕方の6時だった。
冷蔵庫の中は聞いていた通り、缶ビールやワインなどお酒や少しの調味料だけだった。
「剛くん、私ご飯作るからお仕事まだあるんでしょ?気にせずお仕事してね」
「ありがと。ご飯ができるまでには終わらすね」
新婚夫婦みたいだった。
料理教室や一人暮らしで慣れた手つきでたんたんと5品作り、小さいテーブルに並べると剛くんはちょうど仕事を終わらせ2人で食卓を囲んだ。
「花ちゃん、すごい……」
「お口に会うかわからないけどどうぞ」
「いただきます」
長ネギとお豆腐のお味噌汁に、肉じゃが、ほうれん草とゴマのおひたしに鯖の塩焼き、鳥肉の照り焼き。剛くんは一つずつ口に運んでいった。
「花ちゃん…すっごいおいしい!」
「ほんと?よかったあ」
「びっくりしたよ!花ちゃん料理上手だね、最近コンビニの弁当ばっかりだったからもうほんとに…おいしい」
「ふふ、なんか嬉しいな」
「本当においしいよ。これからこんなにおいしいご飯食べれるなんて幸せだよ」
「剛くん褒めすぎー。」
「本当においしいよ。」
剛くんはニコニコしながらお箸を進めた。
「ふぅー。おいしかったあ。ごちそうさまあ。」
「お風呂沸かしてるからどーぞ」
「え、いつの間に。」
「剛くんお仕事してたから気づかなかっただけだよ」
「ありがと。」
一つ残らず平らげて綺麗になったお皿を洗い終わると剛くんもタイミングよくお風呂からでてきた。
「剛くん服きてて気づかなかったけど、すごい身体鍛えてるの?」
綺麗に割れた腹筋。太い腕。足。プリッとでた胸筋、細マッチョとはこういうことだなと実感させられた。
「筋肉質だからね。昔野球してたのもあるかな?」
「あ、剛くんビール飲むでしょ?おつまみつくるね」
「え、花ちゃんそんなこともできるの?」
「んー、私もお酒飲むからね」
「なら!一緒にのも!ってだめか、」
「私お風呂入るね?」
黒のタンクトップにスウェットのズボンをはいてソファに腰掛ける剛くんの元に冷やしておいたグラスとビールにおつまみを渡しお風呂にはいった。
シャンプーは剛くんの匂いがした。
白い入浴剤の入った湯船。お風呂につかるのも久しぶりだった。
少しのぼせた体をタオルでふくと、着替えをもってくるのを忘れたことに気づいた。タオルを身体に巻き、ドアをあけると剛くんがいた。
「え、あ、どうしたの?」
「着替え忘れちゃって…」
「そ、そっか。あ、おつまみありがとおいしかった」
「う、うん。えっと流し置いててくれたら洗っとくよ」
「いや、そんな、俺がするから」
「あ、うん。ありがと」
キャミソールにレースのホットパンツをはき、髪を乾かしてリビングへ向かった。洋画のDVDに見入る剛くんの横に座るとやっと私に気づいた。
「あ、もう23時か。」
「剛くん、明日仕事でしょ?早く寝なきゃね」
「そうだね。花ちゃん、今日ほんとにありがと」
「え?」
「なんか、こんなそっけない家だけどさ花ちゃんいたらなんか落ち着く」
「剛くんのお家じゃん」
「そうなんだけど、なんか、落ち着く」
「そっか、ならよかった」
「きてくれてありがと」
「こちらこそだよ。ありがと」
「花ちゃん、まだ布団ないからベッド使って?俺ソファでねるから」
「そんな!私がソファでねるよ!だから剛くんベッドでねて?」
「いや、花ちゃん女の子だよ?風邪ひいちゃうよ、」
なんて言い合いを続けて10分
「ベッド広いね、これなら最初から一緒に寝ればよかったね」
「花ちゃん大丈夫?嫌じゃない?」
「なんか、誰かとこうやって寝るの少しぶりだから…あったかいね。」
剛くんは私を抱きしめた。
「剛くん?」
「俺さ…だめだ」
「え、どうしたの?」
「花ちゃん…好き」
「剛くん…」
「大切にする。泣かせたりしない。俺が…守るよ。」
「剛くん…私なんて…」
「全部知ってる。知ってるよ。けどそんなことどうでもいい。花ちゃんが好き。」
頭は混乱していた。けど、剛くんの体温を感じながら後ろから聞こえる耳元にかかる暖かい息に私は魔法をかけられるみたいに素直にうけとめた。
「剛くんのことちゃんと見れるように努力するからね。」
「ありがとう。」
その日剛くんは腕枕をしながら私を抱きしめたまま眠った。
一緒のベッドに寝ているのに手を出さない人なんて初めてだった。
私も剛くんの包容力に安心し、眠りについた。