グランドに行くと人だかりができていた

「ちょっとすみません。どうしました?」

「俺が蹴ったボールがこいつの胸にあたって……」

彼が蹴ったのだろう。ボロボロ泣いていた

怪我をした彼は意識もハッキリしていた。

「分かった。落ち着いて。大丈夫だから。聞こえるかな?名前を言ってくれる?」

「森田健です。」

「ちょっと胸の音聞かせてね?服切るよ?」

服を切ると、少し赤くなった胸があった。

聴診器をあてると、私はすぐさま気づいた。

肺に穴が開いてるかもしれない。

「おい!おい!けんっ!華宮!けんが」

見ると彼の意識はなかった

「森田くん!?きこえる?森田くん!誰か急いで救急セットを教室から持ってきて!急いで!」

救急セット……それは一般的に知られているものではなく、メスやサテンスキーなどの医療用具が入っている。

そして、私は婚約者であり医者である、希成に電話した

「きなりっ!サッカーの途中でボールが胸を強打し、意識不明の男子がいるの!肺に穴が開いてる可能性が高い!どうしよう!」

「落ち着け、ここ。いつものお前はどこにいった?お前ならできるドクターヘリで今から行くからちゃんと処置しておくんだできるな?」

「でもっ、ここはオペ室じゃないし…それ
に…」「でも、道具も医者もそろってる。ここ。お前がやるしかないんだ。その子を助けられるのはお前だけなんだぞ?」

私は震える手を握りしめ目を閉じた。

できる。できる。

そう自分に言い聞かせ、深呼吸をして目を開けた。

「わかった。やる」

きなりはよしと言って電話をきった

「今から緊急オペを行います。誰か懐中電灯でもいいので明かりを下さい。15分ほどでドクターヘリが来ます。運動場を開けて、消防の指示に従ってください。」

「わかった。」

「それでは始めます!」

それから、生徒の見守る中オペが始まった。

はじめは緊張してたけど、そのうち集中できた。

まもなくしてきなりがきた。

「よくやった。後は任せとけ。頑張ったな!」

そう言って私の頭をなでた

それからきなりはヘリで病院にいった

飛び立った途端、私は地面に崩れ落ちた

親友の夢麻が駆け寄ってきた

涙が止まらなかった

怖くて怖くてどうしようもなかった。