メールを送ってから、さほど時間は経っていないはずだった。
ウトウトとまどろんでいると、病室のドアがノックされる音で目が覚めた。
「理名?
起きてる?」
「メール貰ったから来たよ!」
ヒールで病院の床をコツコツ鳴らさないようにという配慮だろう。
皆、ヒールのないフラットシューズを履いてきている。
皆は相変わらず、女子力の高い格好だ。
椎菜に至っては、細い二の腕が白いレースで透けている。
「あれ、なんでみんないるの……」
ふとした疑問に、美冬が答えてくれた。
「世間様はゴールデンウイーク。
今日は、ウチの学校の創立記念日!」
そういえば、宿泊オリエンテーションでそんなことを言っていた気がする。
いろいろありすぎて、そんな記憶ははるか彼方だ。
「んで?
拓実くんに、治ったら行きたい場所、考えておいてって言われたんでしょ?
気があるんじゃない?
ストレートにデートのお誘いじゃん!
で?
理名は行きたいところあるの?」
美冬が質問攻めにすると、椎菜が彼女の肩に手を置く。
「ダメだよ。
理名に質問攻めは。
混乱する。
自分が質問攻めされたら嫌でしょ?
自分がされて嫌なことは、人にしないのが筋だと思う。
それで?
理名は行きたいところとかやりたいこと、あるの?」
「お願い!
デートにオススメの、映画とカフェ、知っていたら教えて!」
そんなプチ喧嘩には入らずに見ていた深月と華恋から、的確なアドバイスが飛んだ。
「映画なら恋愛ものだよ、絶対!
こんなのいいんじゃない?『はつ恋』っていうやつ!
同調効果で、俺もこの子とこんな恋愛をしたいって思わせることができるし。
あ、同調効果っていうのは、他者を自分と近い意識にすることで、相手に親近感や共有性を感じさせる事が出来るっていう心理学テクニックの1つになるんだ」
深月は、心理学テクニックの解説つきだ。
映画の見どころをスマホで検索して教えてくれる。
王道のラブストーリーで漫画が原作。
幼馴染で友達以上恋人未満の男女。
男性は実は不治の病に侵されていて治る見込みはない。
女性側はそれを知らずに付き合っていて、「病気だ」と宣告されたときの女優の演技が見ものらしい。
「カフェなら、こんなところがあるよ」
甘いものが苦手な私のために、甘いパフェから抹茶パフェまで揃っている和の雰囲気のカフェをオススメしてくれた。
私の好みが分かるのが、流石は親友だ。
「うん、ここ、いいかも!
料理の満足感が高ければ、一緒にいた相手との満足度も高まる「ランチョン効果」
も一緒に狙えるし!」
さすがはカウンセラーの娘だ。
深月は、私が全く知らない心理学の知識をたくさん持っている。
私からの相談から始まったガールズトーク。
その最中、恋愛のカリスマ、華恋が深月に話を振った。
「椎菜と美冬は言わずもがな、理名は好きな人いるじゃない?
深月はどうなの?
……いないの?
好きな人!」
「いないよ」
即答する深月。
一同は一斉に残念がった。
もちろん、私もその1人だ。
深月くらいの心理学の知識を持っているなら、モテそうだ。
それに、告白の成功率もかなり高いと思っていた。
「まぁ、深月のお父さん、アイドルだからね。
お父さんのカッコよさをずっと見てたら、相手に求める理想も高くなっちゃうよね。
焦らないで、ゆっくり相手を見つけていけばいいと思うよ。
何かあれば、私ももちろんだけど、麗眞も協力するし」
椎菜がフォローする。
そんな深月の様子を、華恋だけが疑念の目で見ていた。
「あ、忘れてた!
私、そろそろ行かなきゃ!」
椎菜が声をあげる。
どうやら、麗眞くんを病室の外で待たせているらしい。
「麗眞くんとデートでしょ?
楽しんできてねー!」
「感想くらいは聞かせてね!」
椎菜は、麗眞くんから預かったという菓子折りのおせんべいを置いて、満面の笑みで病室から出て行った。
幸せそうでいいなぁ。
「恋愛のカリスマ、華恋はいないの?
好きな人!
まぁ、中学時代はレベル高い人を堕としたみたいだから、華恋なら好きな人へのアプローチ、大丈夫だよね」
「いるって言いたいんだけどね。
今はいないんだ。
どこかに、いい人落ちてないかな?」
「華恋は、自分の恋より、他の人の恋って感じだよね!」
「好きになる人、自分の弟に似てガタイいい人が多かったもんね!」
美冬が言う。
華恋に、弟いたの?
は、初耳……
弟と撮ったというプリクラがあると言うので見せてもらった。
その画面を、皆で覗き込んだ。
確かに、本当に中学生かと思うくらい、筋肉だけはがっしりしていて、タンクトップから身体の線が分かるくらいだ。
2歳年下らしい。
ガールズトークをしていると、深月が帰るというので皆もそれに合わせて帰って行った。
皆はGW明けの学校が始まったら、また来てくれるという。
ウトウトとまどろんでいると、病室のドアがノックされる音で目が覚めた。
「理名?
起きてる?」
「メール貰ったから来たよ!」
ヒールで病院の床をコツコツ鳴らさないようにという配慮だろう。
皆、ヒールのないフラットシューズを履いてきている。
皆は相変わらず、女子力の高い格好だ。
椎菜に至っては、細い二の腕が白いレースで透けている。
「あれ、なんでみんないるの……」
ふとした疑問に、美冬が答えてくれた。
「世間様はゴールデンウイーク。
今日は、ウチの学校の創立記念日!」
そういえば、宿泊オリエンテーションでそんなことを言っていた気がする。
いろいろありすぎて、そんな記憶ははるか彼方だ。
「んで?
拓実くんに、治ったら行きたい場所、考えておいてって言われたんでしょ?
気があるんじゃない?
ストレートにデートのお誘いじゃん!
で?
理名は行きたいところあるの?」
美冬が質問攻めにすると、椎菜が彼女の肩に手を置く。
「ダメだよ。
理名に質問攻めは。
混乱する。
自分が質問攻めされたら嫌でしょ?
自分がされて嫌なことは、人にしないのが筋だと思う。
それで?
理名は行きたいところとかやりたいこと、あるの?」
「お願い!
デートにオススメの、映画とカフェ、知っていたら教えて!」
そんなプチ喧嘩には入らずに見ていた深月と華恋から、的確なアドバイスが飛んだ。
「映画なら恋愛ものだよ、絶対!
こんなのいいんじゃない?『はつ恋』っていうやつ!
同調効果で、俺もこの子とこんな恋愛をしたいって思わせることができるし。
あ、同調効果っていうのは、他者を自分と近い意識にすることで、相手に親近感や共有性を感じさせる事が出来るっていう心理学テクニックの1つになるんだ」
深月は、心理学テクニックの解説つきだ。
映画の見どころをスマホで検索して教えてくれる。
王道のラブストーリーで漫画が原作。
幼馴染で友達以上恋人未満の男女。
男性は実は不治の病に侵されていて治る見込みはない。
女性側はそれを知らずに付き合っていて、「病気だ」と宣告されたときの女優の演技が見ものらしい。
「カフェなら、こんなところがあるよ」
甘いものが苦手な私のために、甘いパフェから抹茶パフェまで揃っている和の雰囲気のカフェをオススメしてくれた。
私の好みが分かるのが、流石は親友だ。
「うん、ここ、いいかも!
料理の満足感が高ければ、一緒にいた相手との満足度も高まる「ランチョン効果」
も一緒に狙えるし!」
さすがはカウンセラーの娘だ。
深月は、私が全く知らない心理学の知識をたくさん持っている。
私からの相談から始まったガールズトーク。
その最中、恋愛のカリスマ、華恋が深月に話を振った。
「椎菜と美冬は言わずもがな、理名は好きな人いるじゃない?
深月はどうなの?
……いないの?
好きな人!」
「いないよ」
即答する深月。
一同は一斉に残念がった。
もちろん、私もその1人だ。
深月くらいの心理学の知識を持っているなら、モテそうだ。
それに、告白の成功率もかなり高いと思っていた。
「まぁ、深月のお父さん、アイドルだからね。
お父さんのカッコよさをずっと見てたら、相手に求める理想も高くなっちゃうよね。
焦らないで、ゆっくり相手を見つけていけばいいと思うよ。
何かあれば、私ももちろんだけど、麗眞も協力するし」
椎菜がフォローする。
そんな深月の様子を、華恋だけが疑念の目で見ていた。
「あ、忘れてた!
私、そろそろ行かなきゃ!」
椎菜が声をあげる。
どうやら、麗眞くんを病室の外で待たせているらしい。
「麗眞くんとデートでしょ?
楽しんできてねー!」
「感想くらいは聞かせてね!」
椎菜は、麗眞くんから預かったという菓子折りのおせんべいを置いて、満面の笑みで病室から出て行った。
幸せそうでいいなぁ。
「恋愛のカリスマ、華恋はいないの?
好きな人!
まぁ、中学時代はレベル高い人を堕としたみたいだから、華恋なら好きな人へのアプローチ、大丈夫だよね」
「いるって言いたいんだけどね。
今はいないんだ。
どこかに、いい人落ちてないかな?」
「華恋は、自分の恋より、他の人の恋って感じだよね!」
「好きになる人、自分の弟に似てガタイいい人が多かったもんね!」
美冬が言う。
華恋に、弟いたの?
は、初耳……
弟と撮ったというプリクラがあると言うので見せてもらった。
その画面を、皆で覗き込んだ。
確かに、本当に中学生かと思うくらい、筋肉だけはがっしりしていて、タンクトップから身体の線が分かるくらいだ。
2歳年下らしい。
ガールズトークをしていると、深月が帰るというので皆もそれに合わせて帰って行った。
皆はGW明けの学校が始まったら、また来てくれるという。