家に着いて、父のおかえりという言葉にも頷きしか返すことが出来なかった。
「宿泊学習で彼氏でもできたか?」
父の言葉にも何も返さず、自分の部屋への階段を上がった。
荷物を解くより先にスマホを開く。
メッセージ欄を開いて、先ほど会った男の子のアカウントを必死に辿る。
四角い枠に、心まで穏やかになりそうな青空が収まった画像が設定されたプロフィールが見つかる。
……これだ。
そして、メッセージ欄に丁寧に文字を打っていった。
『岩崎 理名です。
さっきは助けてくれて、ありがとうございました。
嬉しかったです。
よければ、お礼がしたいです。
明日の夜などは空いていますか?
返信待ってます』
丁寧な文章になっていること、誤字がないことを確認して、送信ボタンを押した。
画面には、私が先ほど打ったものが表示されている。
何だか心がくすぐったくなった。
そして、数分経って、ホーム画面に「新着メッセージが2件あります」という文字が書かれていた。
開いてみる。
『いえいえ、どういたしまして。
女の子があんなぎゅうぎゅうにされてて、重い荷物を持ってるから仕方ないのに、皆から白い目で見られてるのに耐えられなかったから、助けただけだよ』
これ、さっきの………拓実くんからのメッセージだ。
送信時間が10時間前になっている。
そんなに前にメッセージをくれたのに、全く気が付かなかった。
申し訳ない気持ちが一気に胸に押し寄せる。
いてもたってもいられず、もう一度メッセージ欄を開いた。
送ったメッセージは一言。
『返信に気付かず、ごめんなさい。
今気が付きました』
返信しなかったことで、気を悪くしなければいいけれど。
立て続けにメッセージを送ったことで、迷惑がられなければいいけれど。
嫌われるのだけはなんとしても避けたい。
困った時は、友達に相談だ。
1人は選択肢から消えた。
きっと彼女は、私なんかが邪魔しちゃいけない甘い時間を過ごしている。
迷った末に掛けた先。
「恋愛のカリスマ」の異名を欲しいままにしたという過去を持つ親友、華恋だ。
『理名?
どーしたのよ、いきなり電話なんて』
「どーしよ華恋!
あの、夢の通りになっちゃったよー!
そっくり同じじゃないけど!
絡まれたの、助けてくれたのが拓実くんだったのー!
あれ、予知夢だったのかもしれない!」
『わ、分かったから!
まずは落ち着こう?理名。
何か理名の方から動いたの?
お礼したいので、とか』
「まだなの。
その前に、10時間前に華恋が送ったやつへの返信が来てたのに気付かないでメッセージ送っちゃったから、迷惑がられてないか心配になっちゃって」
『やっぱり変わるのね、恋すると。
もう既に、いつもの理名じゃないもん。
いつもならスパッと結論出せるじゃない』
確かに。
彼女の言葉に、何度も首を縦に振った。
電話越しだから、私が頷いているのなんて、華恋にはわかるはずないのに。
「そうかも」
『……まぁ、恋愛ってそんなもんよ。
で? 理名。
別に返信遅くなったからって、彼は気にしないわよ。
そんなもんなの。
メールじゃないんだから。
私が宿泊オリエンテーションから帰宅!って呟いたから、向こうも事情わかってるし』
「え?
そうなの?」
『理名、なんにも知らないのね。
いいから、貴女から言ってみなさい?
お礼したいからお茶でもどうですかって』
「それは、打ったよ?
向こうは学校が何時に終わるかも分からないから、夕方から夜って指定したけど」
『それで!?
返事は?』
普段から高い華恋の声が、より一層高くなる。
「まだ何も……」
『そっか。
来るはずだから、来たら教えてね?
拓実くんとやらを堕とすのはそれからね。
誰かにアドバイスするのって久しぶりだから、気合入るわ。
じゃあ、連絡待ってるから!!』
華恋のその声と共に、電話は切れた。
スマホを枕の上に置いて、荷物を解いた。
……荷物の整理を終えた。
携帯電話を開いてみる。
「新着メッセージが1件あります」とあった。
慌てて、文字に目を通す。
送り主は、拓実くんだった。
「明日なら夕方から時間取れるから、お茶の時間、というかどうせなら食事でも一緒に、と思ってるんだけど、どうかな?」
…………。
返信来てたけど、どういうような文面を返せばいいの、これ。
「ありがとうございます」は、返事になっていない気がするし。
悩みに悩んだ。
明日、ぜひ、お願いします!と書いて送った。
その後、華恋にメッセージで送った。
不安だったからだ。
そのうちに、父から疲れただろうから、先に入浴したらどうだと促されたので、先にお風呂に入ることにした。
いつもより念入りに身体に泡をまとわせて、丁寧に髪も洗った。
普段はつけないトリートメントも、髪に丁寧に馴染ませた。
父におやすみだけを言った。
携帯電話のランプが光っているのに気づいた私は、すぐに開く。
来ていたのは、ショートメールメッセージ。
きっと、短い用件なのだろう。
送り主は華恋からだった。
「理名!
明日、11時くらいから空いてる?
駅で待ち合わせしよ?」
こんな文言だった。
「空いてるよ?
どしたの?」
私の送ったそれにすぐに返信が来た。
「それはまだ内緒!
わかった、明日は11時には駅に着ていてね?
おやすみ!」
華恋、私を誘って、どこで何をするつもりなんだろう……
そんなことを思いながら、父に10時30分には家を出ることを伝えて、2日ぶりの自宅のベッドで眠りについた。
「宿泊学習で彼氏でもできたか?」
父の言葉にも何も返さず、自分の部屋への階段を上がった。
荷物を解くより先にスマホを開く。
メッセージ欄を開いて、先ほど会った男の子のアカウントを必死に辿る。
四角い枠に、心まで穏やかになりそうな青空が収まった画像が設定されたプロフィールが見つかる。
……これだ。
そして、メッセージ欄に丁寧に文字を打っていった。
『岩崎 理名です。
さっきは助けてくれて、ありがとうございました。
嬉しかったです。
よければ、お礼がしたいです。
明日の夜などは空いていますか?
返信待ってます』
丁寧な文章になっていること、誤字がないことを確認して、送信ボタンを押した。
画面には、私が先ほど打ったものが表示されている。
何だか心がくすぐったくなった。
そして、数分経って、ホーム画面に「新着メッセージが2件あります」という文字が書かれていた。
開いてみる。
『いえいえ、どういたしまして。
女の子があんなぎゅうぎゅうにされてて、重い荷物を持ってるから仕方ないのに、皆から白い目で見られてるのに耐えられなかったから、助けただけだよ』
これ、さっきの………拓実くんからのメッセージだ。
送信時間が10時間前になっている。
そんなに前にメッセージをくれたのに、全く気が付かなかった。
申し訳ない気持ちが一気に胸に押し寄せる。
いてもたってもいられず、もう一度メッセージ欄を開いた。
送ったメッセージは一言。
『返信に気付かず、ごめんなさい。
今気が付きました』
返信しなかったことで、気を悪くしなければいいけれど。
立て続けにメッセージを送ったことで、迷惑がられなければいいけれど。
嫌われるのだけはなんとしても避けたい。
困った時は、友達に相談だ。
1人は選択肢から消えた。
きっと彼女は、私なんかが邪魔しちゃいけない甘い時間を過ごしている。
迷った末に掛けた先。
「恋愛のカリスマ」の異名を欲しいままにしたという過去を持つ親友、華恋だ。
『理名?
どーしたのよ、いきなり電話なんて』
「どーしよ華恋!
あの、夢の通りになっちゃったよー!
そっくり同じじゃないけど!
絡まれたの、助けてくれたのが拓実くんだったのー!
あれ、予知夢だったのかもしれない!」
『わ、分かったから!
まずは落ち着こう?理名。
何か理名の方から動いたの?
お礼したいので、とか』
「まだなの。
その前に、10時間前に華恋が送ったやつへの返信が来てたのに気付かないでメッセージ送っちゃったから、迷惑がられてないか心配になっちゃって」
『やっぱり変わるのね、恋すると。
もう既に、いつもの理名じゃないもん。
いつもならスパッと結論出せるじゃない』
確かに。
彼女の言葉に、何度も首を縦に振った。
電話越しだから、私が頷いているのなんて、華恋にはわかるはずないのに。
「そうかも」
『……まぁ、恋愛ってそんなもんよ。
で? 理名。
別に返信遅くなったからって、彼は気にしないわよ。
そんなもんなの。
メールじゃないんだから。
私が宿泊オリエンテーションから帰宅!って呟いたから、向こうも事情わかってるし』
「え?
そうなの?」
『理名、なんにも知らないのね。
いいから、貴女から言ってみなさい?
お礼したいからお茶でもどうですかって』
「それは、打ったよ?
向こうは学校が何時に終わるかも分からないから、夕方から夜って指定したけど」
『それで!?
返事は?』
普段から高い華恋の声が、より一層高くなる。
「まだ何も……」
『そっか。
来るはずだから、来たら教えてね?
拓実くんとやらを堕とすのはそれからね。
誰かにアドバイスするのって久しぶりだから、気合入るわ。
じゃあ、連絡待ってるから!!』
華恋のその声と共に、電話は切れた。
スマホを枕の上に置いて、荷物を解いた。
……荷物の整理を終えた。
携帯電話を開いてみる。
「新着メッセージが1件あります」とあった。
慌てて、文字に目を通す。
送り主は、拓実くんだった。
「明日なら夕方から時間取れるから、お茶の時間、というかどうせなら食事でも一緒に、と思ってるんだけど、どうかな?」
…………。
返信来てたけど、どういうような文面を返せばいいの、これ。
「ありがとうございます」は、返事になっていない気がするし。
悩みに悩んだ。
明日、ぜひ、お願いします!と書いて送った。
その後、華恋にメッセージで送った。
不安だったからだ。
そのうちに、父から疲れただろうから、先に入浴したらどうだと促されたので、先にお風呂に入ることにした。
いつもより念入りに身体に泡をまとわせて、丁寧に髪も洗った。
普段はつけないトリートメントも、髪に丁寧に馴染ませた。
父におやすみだけを言った。
携帯電話のランプが光っているのに気づいた私は、すぐに開く。
来ていたのは、ショートメールメッセージ。
きっと、短い用件なのだろう。
送り主は華恋からだった。
「理名!
明日、11時くらいから空いてる?
駅で待ち合わせしよ?」
こんな文言だった。
「空いてるよ?
どしたの?」
私の送ったそれにすぐに返信が来た。
「それはまだ内緒!
わかった、明日は11時には駅に着ていてね?
おやすみ!」
華恋、私を誘って、どこで何をするつもりなんだろう……
そんなことを思いながら、父に10時30分には家を出ることを伝えて、2日ぶりの自宅のベッドで眠りについた。