金沢駅の方向に少し戻るようにして、スマホに道案内をして貰う。

お目当ての和パフェのお店に到着した。

さっそく、加賀棒茶ゼリーときなこのパフェを注文した。

きなこに白玉、あんこにアイス。

これでもかと詰め込まれているのに、それぞれを混ぜて食べると優しい味わいを感じられた。

拓実は、
『抹茶好きの七代目が本気で作った濃厚ピスタチオと抹茶のパフェ』

をオーダーしていた。

抹茶が恋しくなったようだ。

抹茶、ピスタチオ、ナッツやベリーがいいマリアージュで、関東にあれば足繁く通いたいほど美味しかったそう。

もちろん、これも共有アルバムにアップしていた。

私の分のパフェも、手を付ける前に拓実が撮ってくれて、しかもそのままと加工したもの、2つをあげていた。

自分の彼女とスイーツ男子のテンションについていけなかったのであろう巽くん。

一人、ほうじ茶ラテをオーダーしていた。

「美味しかったー!

私、甘すぎるものより和の甘さが心地いいんだよね」

ゆっくり食べている私たちに対し、琥珀は無言で、パフェを掬ったスプーンを口に運んでいる。

「さっき、海鮮丼だけじゃなくておまけのノドグロの握りまで食べてたのに?

琥珀、音楽教師じゃなくてフードファイター向いてるんじゃ……」

「琥珀とデート行くと、いつも俺のほうがビビるくらい、ガッツリ食うんだよ。

タブレットとかで注文する飲食店、たまにあるけど、普通に大盛りとかにするし。

そろそろ13時だ。

ここを出て、駅に向かえばちょうどいいだろう」

巽くんはそう言って、皆の分をまとめて会計して、店を出た。

金沢駅に着くと、既に皆集まっていた。

「余裕のある行動、素晴らしいです。

それでこそ、大人の嗜みですね。

さて、参りましょう。

駅からは送迎バスを依頼してあります」

30分は掛からなかった。

駅に着くと、バスは既に待っていた。

「宜しくお願いします。

大所帯ですみません」

「とんでもない。

思い出に残る卒業旅行にこの宿を選んで頂いて、嬉しいです。

楽しんで下さいね」

「ありがとうございます」

深月や椎菜がしっかり運転手への気遣いを見せた。

周りにさり気なく気を遣えるのも、さっきの相沢さんの言葉を借りると、大人の嗜みなのだろうか。

部屋は和室で、有料とはいえ、浴衣を選べた。

せっかくだからと、浴衣を選ぶ。

青地に和の模様が映えるものを選んだ。

部屋に行ってさっそく浴衣を着る。

「一休みしたらひと風呂浴びて来れば?と言おうとしたけど。

皆可愛くなってるじゃん。

こういうのこそ、写真撮らなきゃでしょ」

小野寺くんが1枚、写真を撮ってくれた。

少し腰を落ち着けて、湯あたりしないようにお茶菓子を食べる。

皆でお風呂に向かおうと思ったのに、美冬が小野寺くんに呼ばれた。

しばらくして、動画が共有アルバムにアップロードされた。

スマホの画面を覗き込んだ皆が、目を丸くさせ、口をあんぐりさせていた。

『大学に合格したばかりの今だから、言っておきたい。

今でこそ、大学生になったら同棲を始めるけど。

美冬はアナウンサー、俺はカメラマン。

お互いの夢をちゃんと叶えたその時は、俺と結婚してほしい。

いいかな?美冬」

小野寺くんが、美冬にプロポーズをしていた。

深月や華恋、琥珀は、それぞれきゃー、と言いながら画面を見つめている。