始業式が始まって数日。
3日間かけて、新澤先生との面談が行われた。
進路相談という体だが、ほとんどその人の人となりを知る雑談のようなものだ。
趣味などない私は、ほとんどが進路の話題だった。
「成都輪生大学ね。
内申点も十分だし、貴女なら推薦で行けると思うわ。
成績に偏りはあるけど、それを他の科目と積み上げた良い事の評価でカバーしてるもの。
推薦で挑戦させられる生徒は極力挑戦させろ、ってお達しを理事長から直々に受けていてね。
各担任は張り切ってるわ。
もちろん、貴女のお友達たちは推薦受ける気満々よ。
カナダに留学に行く、宝月くん以外はね」
ああ、やっぱり彼は海外に行くのか。
そういえば、今週は珍しく、椎菜が麗眞くんと一緒に登校しなかった。
あくまで確証のない噂ではある。
その前日に麗眞くんは、長らく私に隠していた、カナダ行きを椎菜に告げたそうだ。
これも憶測だが、もしかして椎菜は、高校卒業後の麗眞くんがいない生活を既に見据えているのだろうか。
だとしたら、相当にメンタルの強い子だ。
第一線でモデルや女優をこなす母親の遺伝子を強く受け継いだだけのことはある。
「貴女も大変ね。
友人が個性的な子ばかりで。
まぁ、私の高校時代も、同級生に麗眞くんの父親がいたからね。
気持ちは分かるわ。
何か困ったことがあったら何でも言ってね。
協力するわ。
あんな感じでインタビューして貰えて、皆に歓迎されてるのは素直に嬉しいのよ。
麗眞くんの父親の、いいえ。
理事長の言った通りだわ。
生徒の自主性を大事にする高校、って本当ね。
心から、この正寮賢に来られて良かったわ」
あ、やっぱりか。
世間って狭いな。
先生は私に長話をしてしまったことを詫びた。
気にしていないというとニッコリと微笑んで、教室を出る私を見送った。
新澤先生はこれから、正寮賢の寮で華恋と面談なのだという。
面談が終わると、近くのゲームセンターに、琥珀や深月、美冬や小野寺くん、麗眞くんや椎菜が集まっているというメッセージが届いていた。
すぐに行くと返信すると、指定されたゲームセンターに向かう。
この振る舞いは、最上級生としては相応しくないけれど。
琥珀が、ドラムゲームや太鼓ゲームをプレイし終わり、野次馬たちに拍手を貰っているところだった。
『動画は大学に合格するまで止めますが、合格したらまた再開致します!
それまで、しばしのお別れです!
対戦したい方は、腕を磨いて待っていて下さいね!」
どうやら、今撮影しているのが大学受験前最後の動画で、皆生配信していたらしい。
生配信なんて、よくやる度胸あるよなぁ……
「生配信は以上で終了です!
集まっている皆さんは、通行の邪魔になるので、速やかに解散をお願いします!」
琥珀の鶴の一声で、野次馬たちが解散している、その時だった。
「出口に向かった青い帽子、Tシャツにジーンズの男、捕まえてー!
ひったくりよ!」
小野寺くんがその男のを目ざとく見つけて、腕を引っ張った。
「その鞄、素直に返すなら、何もしないけど」
合気道の技だろうか、相手の男を難なく床に倒す。
持ってきた鞄を放り投げると、野次馬たちを押しのけてゲームセンターから出ようとする。
「もうすぐスタッフの人が呼んだ警察の人が来るんだけど。
それまで大人しくしててくれないと、困るのよね」
琥珀も同じく、合気道の技だろうか。
いとも簡単にひったくり男を投げ飛ばした。
「つい投げちゃった。
父親にあまり最初から投げ技に頼るな、って言われてたんだけど」
数分後にその男は警察官に連行され、私たちは相沢さんの運転する車に乗せられた。
車は、ゆっくりと麗眞くんの家に向かっていった。
3日間かけて、新澤先生との面談が行われた。
進路相談という体だが、ほとんどその人の人となりを知る雑談のようなものだ。
趣味などない私は、ほとんどが進路の話題だった。
「成都輪生大学ね。
内申点も十分だし、貴女なら推薦で行けると思うわ。
成績に偏りはあるけど、それを他の科目と積み上げた良い事の評価でカバーしてるもの。
推薦で挑戦させられる生徒は極力挑戦させろ、ってお達しを理事長から直々に受けていてね。
各担任は張り切ってるわ。
もちろん、貴女のお友達たちは推薦受ける気満々よ。
カナダに留学に行く、宝月くん以外はね」
ああ、やっぱり彼は海外に行くのか。
そういえば、今週は珍しく、椎菜が麗眞くんと一緒に登校しなかった。
あくまで確証のない噂ではある。
その前日に麗眞くんは、長らく私に隠していた、カナダ行きを椎菜に告げたそうだ。
これも憶測だが、もしかして椎菜は、高校卒業後の麗眞くんがいない生活を既に見据えているのだろうか。
だとしたら、相当にメンタルの強い子だ。
第一線でモデルや女優をこなす母親の遺伝子を強く受け継いだだけのことはある。
「貴女も大変ね。
友人が個性的な子ばかりで。
まぁ、私の高校時代も、同級生に麗眞くんの父親がいたからね。
気持ちは分かるわ。
何か困ったことがあったら何でも言ってね。
協力するわ。
あんな感じでインタビューして貰えて、皆に歓迎されてるのは素直に嬉しいのよ。
麗眞くんの父親の、いいえ。
理事長の言った通りだわ。
生徒の自主性を大事にする高校、って本当ね。
心から、この正寮賢に来られて良かったわ」
あ、やっぱりか。
世間って狭いな。
先生は私に長話をしてしまったことを詫びた。
気にしていないというとニッコリと微笑んで、教室を出る私を見送った。
新澤先生はこれから、正寮賢の寮で華恋と面談なのだという。
面談が終わると、近くのゲームセンターに、琥珀や深月、美冬や小野寺くん、麗眞くんや椎菜が集まっているというメッセージが届いていた。
すぐに行くと返信すると、指定されたゲームセンターに向かう。
この振る舞いは、最上級生としては相応しくないけれど。
琥珀が、ドラムゲームや太鼓ゲームをプレイし終わり、野次馬たちに拍手を貰っているところだった。
『動画は大学に合格するまで止めますが、合格したらまた再開致します!
それまで、しばしのお別れです!
対戦したい方は、腕を磨いて待っていて下さいね!」
どうやら、今撮影しているのが大学受験前最後の動画で、皆生配信していたらしい。
生配信なんて、よくやる度胸あるよなぁ……
「生配信は以上で終了です!
集まっている皆さんは、通行の邪魔になるので、速やかに解散をお願いします!」
琥珀の鶴の一声で、野次馬たちが解散している、その時だった。
「出口に向かった青い帽子、Tシャツにジーンズの男、捕まえてー!
ひったくりよ!」
小野寺くんがその男のを目ざとく見つけて、腕を引っ張った。
「その鞄、素直に返すなら、何もしないけど」
合気道の技だろうか、相手の男を難なく床に倒す。
持ってきた鞄を放り投げると、野次馬たちを押しのけてゲームセンターから出ようとする。
「もうすぐスタッフの人が呼んだ警察の人が来るんだけど。
それまで大人しくしててくれないと、困るのよね」
琥珀も同じく、合気道の技だろうか。
いとも簡単にひったくり男を投げ飛ばした。
「つい投げちゃった。
父親にあまり最初から投げ技に頼るな、って言われてたんだけど」
数分後にその男は警察官に連行され、私たちは相沢さんの運転する車に乗せられた。
車は、ゆっくりと麗眞くんの家に向かっていった。