翌日。

昨日は一部のカップル以外は、夕食後にすぐに麗眞くんの執事である相沢さんに家まで送って貰った。

朝までどんちゃん騒ぎをすることはなかったためか、よく眠れた気がする。

登校すると、既に生徒会カップルズと学園公認のカップルはもう来ていた。

「お、理名、早いね!

おはよー!」

「おはよ……

2人とも早いね……」

確かこの2組のカップルは、昨夜は麗眞くんの豪邸に泊まっていたはずだ。

「仕方ないだろ、生徒会の仕事もあるし、今日は俺と深月が日直なの」

「それは俺たちが知ってたから、生徒会の仕事に専念してほしくて、俺と椎菜が代わった、ってわけ」

生徒会のメンバーには、この学園を良くして貰わなければならない。

「私も手伝う。

だから遠慮なく、深月と秋山くんは、生徒会の仕事に専念してきてほしいな。

この2人だと、日直の仕事よりイチャつく頻度のほうが多そうで進まないかもだし」

「助かる!

ありがと、理名!」

「サンキューな。

俺は仕事しつつ、自分より他人の為に無茶しがちな姫を見守ることにするよ」

今度いいカフェ見つけたから行こう、お礼に奢ると言い添えて、深月は生徒会室へと向かっていった。


「で?
何か気になることでもあるの?

わざとあの2組追い出したってことは、彼女たちのことかな」

「何か深月、無理して生徒会の仕事や部活に邁進しすぎてる気がしてさ。

何か考えたくないことを考えられなくするときに、自分の心を守るためにそうするみたい。

昔入院してた時に凛さんに聞いたことがある。

何か今の深月、そんな風に見えるんだ。

私の考えすぎかもしれないけど」

机を綺麗に動かしながら整頓していた麗眞くんが、なんの気なしに、という風に呟いた。

「心配なんだと思うぜ、自分の母親が。

なんせ、ちょっと今までのカウンセリングよりは苦戦しているようだし。

相当癖がありそうだって、華恋ちゃんの母親。

……それに、だ。

不安を煽るようで申し訳ないが、昨今の経済不安で、アメリカは治安が悪化しているんでな。

何せ、向こうは日本と違って一瞬で人の生命を奪える道具を持てるからな。

気が気じゃないだろうよ」

ここ日本でも、アメリカで起きた拳銃を用いたテロ事件は、大体的に報道される。

それが、いつ自分の母親に降りかかるか分からないのだ。

その不安はどれほどだろう。

「まぁ、そんな彼女の様子に道明が気付かないはずがないからな。

何か考えてるだろ。


暫く、深月ちゃんを道明の家にいさせるとかな。

道明の両親と深月ちゃん、仲良いみたいだし。

相当、アイツの両親が深月ちゃんのこと気にいってる、というのが正しいかもしれないが」

え、そうなの?

この麗眞くんの言葉が当たらずとも遠からずなんて……

それが数日後に分かるなんて、この時は思ってもみなかった。