家の外見は、直線と曲線をどちらもうまく使っていた。

高層マンションのように近寄りがたい見た目ではない。

白い床に、靴が何百足入るんだと思ってしまう下駄箱。

麗眞くんのお屋敷と同じような作りだが、木目調で温かみのある印象を受けるらせん階段。

3階に案内されると、都内の夜景を一望できるテラスがあり、テーブルやベンチもあった。

すでに料理やホットプレートも用意されていて、ちょっとしたBBQ気分だ。

「騒ぐのは結構ですが、声のボリュームは抑えてくださいね。

家の内部こそ防音対策はバッチリですが、ここはそうもいきませんので」

「にしても、さすが親父さんがアイドルなだけあるよな!

麗眞のメイド姿、完璧だったぞ!」

「やーめーろー!

絶対姉貴に大爆笑される!」

「何より、劇の舞台上とはいえ、愛しの彼女さんとイチャつけてよかったんじゃね?」

「この会終わったら2人でイチャつくのもありだと思うしな。

何なら余裕で2人入れる広さみたいだし、一緒に風呂入るのもありなんじゃね?」

「は!?

おい、さすがにそれは……」

「んー?

この間、ウチの学園に講演に来た弁護士さんから聞いたぜ。

麗眞の両親たちも、よく2人で風呂入ったりしてたみたいじゃん。

いいんじゃね、万が一さえないように、一定以上のイチャイチャは上がってから、ってルールにすれば」

顔を真っ赤にしている椎菜を、深月や美冬が小突く。

「2日間も休みなんだし、たまにはイチャつくしかしない休日の過ごし方もいいんじゃない」

私がダメ押しの一言を言うと、チラリと麗眞くんを顔を見た椎菜。

彼に耳元で何やら言われると、椎菜はゆっくりと首を縦に振った。

「いいよなぁ、俺も深月とイチャつきたくなってきた。

俺がピアノ弾いてる最中、深月は俺から一瞬たりとも目を離してなかった、ってな。

賢人やら麗眞、理名ちゃんや華恋ちゃんからも言質とってるんだけど。
ホント?」

「……見てちゃダメだったの?」

ふい、と彼から目を逸してそう言った深月を、壁の端に追い詰めて、二言三言話している秋山くん。

その様子を見つめていた友映ちゃんが、あ、と声をあげた。

「あんな感じで、真紀くんに詰め寄られて、告白されて、OKしたら割と深い口づけされて。

ドキドキしすぎて、心臓止まるかと思いました」

それを聞いた麗眞くんや椎菜、琥珀はやっぱりな、という顔をしていた。

「真紀くん、お父さんの血を引きすぎちゃったのね。

修学旅行で今の奥さんに手を出すのを何とか堪えたみたいだし」

「気をつけな、友映ちゃん。

意外にロストするの早いかもよ?」

「は!?
俺の大事な妹に、段階すっ飛ばして手を出したら一発殴る」

成司くんがシスコンぶりを発揮すると、まぁまぁ、と小野寺くんや麗眞くんに宥められていた。

料理があらかたなくなった頃、黒沢兄妹と、碧は帰るという。

3人については、相沢さんが送っていった。

麗眞くんと椎菜は、相沢さんの後を追うようにテラスを出て行った。

今頃バスルームでイチャついているのだろう。

「きっと椎菜と麗眞くん、深月と秋山くんのカップル2組はイチャつくんだろうし。

美冬と小野寺くんはバイトなんだって。

せっかくだから、明日何も予定ないなら修学旅行のときに着る服でも選びに行かない?」

さすが、こういうのの言い出しっぺは華恋だ。

「琥珀も、巽くんに返事するなら、可愛い服選ばないとね!」

顔を真っ赤にして頷く琥珀の頭を優しく撫でる華恋。

明日は、華恋と美冬、琥珀と私で前にも行ったショッピングモールに再び繰り出すことになった。

翌朝、眠い目を擦りながらリビングに降りる。

麗眞くんの執事の相沢さんに迎えられた。

既にフレンチトーストや野菜スープは用意されていた。

麗眞くんと椎菜は、さんざん愛された翌日だというのに、デートに出かけて行ったらしい。

麗眞くん曰く、これ以上ないくらい満たされたので、可愛い姫の水族館デートの要望を叶えたいのだという。

いいなぁ、デート。

「皆様は、どうぞお車へ。

片道だけでも交通費が浮いたほうが良いでしょう。

お送りしますよ」

お言葉に甘えて、車に乗せてもらった。