腕を引かれた先に、フローラルの香りが鼻孔をくすぐった。
そっと後ろから抱き寄せられる。
「理名ちゃん、みっけ。
髪、まだちょっと濡れてない?
ちゃんと乾かしな?
風邪引くよ」
低くて、ギターだけじゃなく、ボーカルもできそうな澄んだ声の主。
拓実くんだ。
「ありがと、拓実くん」
「うん、早く乾かすんだよ、髪が濡れてると良からぬこと考えちゃうから」
良からぬことって?何?
聞きたかったが、聞けなかった。
ところで、ここはどこだろう。
ソファーがいくつも並び、自動販売機が置かれた部屋。ソファーの前にはモニターもある。
モニターの1つでは画面の向こうで芸能人がクイズに答えていた。
「風呂上がりの休憩場だよ。
ここは男女兼用。
女性用が良ければ椎菜に聞いてくれれば案内してもらえるよ。
女性用でもこんなふうにテレビも見れる。
大きな違いはラウンジ前にスタッフ常駐所があること。
髪乾かしきれなかったらドライヤーとか、ヘアアイロンとかも貸してくれる。
うたた寝したければアイマスクとかも貸してくれるよ?
前に女性用浴場ののれん前で、風呂上がりの椎菜のこと待ってたことがあったの。
こんなとこいないでよ!覗き魔!ヘンタイ!って怒られたんだよね。
それ以来、ここにいるようにしてるの。
風呂入る前の水分補給もできるし」
「あ、やっぱりここにいたー。
も私たちのガールズトークに、聞き耳立ててなかったみたいだから良かったけど」
現れたのは薄いTシャツにショートパンツ姿の椎菜だ。
彼女はすぐに麗眞くんの腕の中に囚われて何やら言われている。
「あれ、皆何してるのー?」
その言葉とともに続々と深月と美冬もラウンジに来た。
深月は秋山くんに照れたように可愛いと言われていたりした。
片や美冬は賢人くんに頭を撫でられている。
「お待たせしました。
ギリギリ、2時間は超えてないはずだよ。
男女交代です。
際どい話もどうぞ?
聞こえないように私たちは女性用ラウンジにいるから」
華恋の言葉に、いつの間にかいたのだろうか。
相沢さんが口を挟む。
「1時間56分。
ギリギリでございましたね。
さて、殿方も同じ時間制限でございますよ。
どうぞごゆっくり。
迷うといけませんので、女性用ラウンジの前まで私が案内いたします。
急いで出てきたのでしょう、まだ髪が濡れている方が何名かおられますね。
ドライヤーの類を貸していただけるよう、手配しておきます」
「行ってくる」
皆がただ手を振るだけ中、椎菜だけは行ってらっしゃい、と麗眞くんに軽くキスをしていた。
どこからどう見ても新婚夫婦だ。
椎菜自身が危惧しているように、遠距離恋愛になった程度で距離を置くまでになるとは到底考えられなかった。
相沢さんの案内で、女性用ラウンジに向かう。
螺旋階段を降りて長い廊下を歩いた先に入口はあった。
相沢さんは、カウンターの女性に二言三言告げると、私たちに一礼してどこかに行ってしまった。
ラウンジの向かいにはカウンターがあり、まだ髪が半乾きの美冬が行くと、ドライヤーとヘアアイロンを貸してくれた。
「ありがとうございます!」
美冬は笑顔でお礼を言うと、入口横の棚でドライヤーを使い始めた。
その横の棚では、椎菜がヘアアイロンを使っている。
「深月と華恋も後でアイロン使うよね?
どっちが先?」
サテンシャツパジャマの上下を着た深月と、キャミソールワンピースを着た華恋に話しかける椎菜。
すると、イチゴ柄の袖が挙がった。
「私でいいかな?
ミッチーにね、ちゃんと髪乾かさないと、今の姿写真撮ってオカズにするけどいい?なんて言われたのよ。
だから早く乾かしたいの、毛先だけだからすぐ終わるよ。
それにしてもオトコってほんと、思考回路どうなってんの」
「深月ったら、もう!
目の前の好きな子が着ているパジャマのボタン外したらどうなるか、ってこと想像したんじゃない?
お風呂上がりだから余計なんでしょ」
華恋の言葉に、ヘアアイロンでクルクルと髪を内巻きにしている椎菜も同意する。
「ホントだよね!
そこは深月に同意!
麗眞ったら、もう!
さっきお風呂上がりの私を見るなり『控えめに言ってエロい。今すぐそのTシャツもショートパンツも脱がしたいくらいだけど我慢する。だからこれだけは許して?』
そう言われて、開放される間際に割と強めに胸触ってきて!
私を煽るだけ煽って何したいの、ホントに!
我慢するとか本人は言ってたけど無理そうね、あれは。
麗眞の、私を開放する間際ちょっとどころか、かなり反応してたし」
知らぬ間に声が大きくなっていたらしい。
周囲の人には寝ている人もいるだろう。
椎菜が慌てて口を両手で塞ぐ。
すると、コンコンと軽いノックの音がして、さっきのフロントの人が入ってきた。
「ごめんなさい!
つい、大きな声を出してしまい……
ご迷惑、でしたよね」
椎菜がフロントの人に謝ると、返答は少しばかり意外なものだった。
「いいのよ。
貸し切りにしてあるから。
好きなだけゆっくりしていってね」
フロントの綺麗に肩のあたりで切り揃えられたストレートの茶髪が印象的なお姉さん。
彼女は私たちに綺麗な礼をすると、ラウンジのドアを閉めた。
「貸し切り、って」
さっき相沢さんがフロントの人に頼んでいたのはこれだったか。
ヘアアイロンは、椎菜から深月に手渡されていた。
「で?深月。
お風呂でも言ったじゃない?
未遂、って言葉だけで逃げようったってそうはいかないよ?って」
「ぶっちゃけどこまでいったのよ。
道明くんのアレは目にしたの?
大きさとか長さは?」
「目にはした、けど……
よくわかんなかった。
何しろ初めて見たし。
こんな感じなんだな、くらいで」
「最初はそうだよねー。
私もそうだったよ。
なんか不思議な感じだよね。
賢人のはスイッチ入る前はそんな大きさないんだけど、スイッチ入るとすごいの、
ここまでなる?ってくらい。
だからこそキツいから、しっかり1回で終わらせてくれるんだけどね」
「いいなぁ。
麗眞のなんて準備できる前からかなりの大きさなのよ。
それが更に増す、ってなるともうホントにキツくて。
最初と、その後5回位は事後に血が出たもん。
しかも復活するのも早いから、立て続けにできちゃうし、小野寺くんのとこみたいに1回かせめて2回で終わらせてほしい」
「麗眞くんはねー。
さっきお風呂と脱衣場でチラッと見えたけど、椎菜、太ももと背中、お尻の辺りにもキスマークあるし。
どんだけ溺愛してるのよ。
発情期のウサギみたい」
言われた椎菜本人は、全く気づいていなかったらしい。
半ば諦めたように、ショートパンツをめくって太ももに目をやると小さく息を吐いた。
「賢人はね、あんまり目立たせるの好きじゃないからって、胸の谷間の辺りにしかシルシつけないの。
しかも薄くしてくれるからありがたい。
恋人を溺愛してるどこかのカップルさんみたいに、あからさまなのは露骨で嫌なんだって」
まぁまぁ、と言うように華恋によって肩に手を置かれた椎菜。
まだ何か不満げなようで、頬をぷくっと膨らませていた。
話の矛先は急に、思わぬところから向かってくるものだ。
「理名はさ、
どこまでいったわけ?
拓実くんと」
「ふえ!?
どこまで、って、何が?」
「この家をよく知ってる人からね、食堂で理名と拓実くんが少しの間だけどキスしてたっていう目撃証言を得たのです」
「え?ちょっと理名、いつの間に?」
「ちょっと、報告してよねー!」
華恋や深月から、散々問い詰められた。
その輪から不意に外れた椎菜は、かかってきた電話に応答している。
「え?
うん、まぁ定番だけど。
私たちもやるの?
疲れたから見てるだけがいいなー。
うん、分かった。
行くよ、じゃあ、また後でね?
麗眞」
通話を切った椎菜は、私たちをぐるりと見回して言った。
「男性陣は卓球場で卓球やってるって。
拓実くんが強いらしい。
やらなくても見てるだけでいいって。
皆、行くー?」
「ここにいつまでもいるのもあれだし、行こうかなー」
「私はちゃっかり参加しようかな!」
そう言う琥珀ちゃんを筆頭に、皆でゾロゾロとラウンジを出る。
ラウンジを出ると、いつからいたのか相沢さんがいた。
「どうぞ。
広いお屋敷です。
迷うといけませんので、ご案内致します」
相沢さんにくっついて、卓球場に向かった。
そっと後ろから抱き寄せられる。
「理名ちゃん、みっけ。
髪、まだちょっと濡れてない?
ちゃんと乾かしな?
風邪引くよ」
低くて、ギターだけじゃなく、ボーカルもできそうな澄んだ声の主。
拓実くんだ。
「ありがと、拓実くん」
「うん、早く乾かすんだよ、髪が濡れてると良からぬこと考えちゃうから」
良からぬことって?何?
聞きたかったが、聞けなかった。
ところで、ここはどこだろう。
ソファーがいくつも並び、自動販売機が置かれた部屋。ソファーの前にはモニターもある。
モニターの1つでは画面の向こうで芸能人がクイズに答えていた。
「風呂上がりの休憩場だよ。
ここは男女兼用。
女性用が良ければ椎菜に聞いてくれれば案内してもらえるよ。
女性用でもこんなふうにテレビも見れる。
大きな違いはラウンジ前にスタッフ常駐所があること。
髪乾かしきれなかったらドライヤーとか、ヘアアイロンとかも貸してくれる。
うたた寝したければアイマスクとかも貸してくれるよ?
前に女性用浴場ののれん前で、風呂上がりの椎菜のこと待ってたことがあったの。
こんなとこいないでよ!覗き魔!ヘンタイ!って怒られたんだよね。
それ以来、ここにいるようにしてるの。
風呂入る前の水分補給もできるし」
「あ、やっぱりここにいたー。
も私たちのガールズトークに、聞き耳立ててなかったみたいだから良かったけど」
現れたのは薄いTシャツにショートパンツ姿の椎菜だ。
彼女はすぐに麗眞くんの腕の中に囚われて何やら言われている。
「あれ、皆何してるのー?」
その言葉とともに続々と深月と美冬もラウンジに来た。
深月は秋山くんに照れたように可愛いと言われていたりした。
片や美冬は賢人くんに頭を撫でられている。
「お待たせしました。
ギリギリ、2時間は超えてないはずだよ。
男女交代です。
際どい話もどうぞ?
聞こえないように私たちは女性用ラウンジにいるから」
華恋の言葉に、いつの間にかいたのだろうか。
相沢さんが口を挟む。
「1時間56分。
ギリギリでございましたね。
さて、殿方も同じ時間制限でございますよ。
どうぞごゆっくり。
迷うといけませんので、女性用ラウンジの前まで私が案内いたします。
急いで出てきたのでしょう、まだ髪が濡れている方が何名かおられますね。
ドライヤーの類を貸していただけるよう、手配しておきます」
「行ってくる」
皆がただ手を振るだけ中、椎菜だけは行ってらっしゃい、と麗眞くんに軽くキスをしていた。
どこからどう見ても新婚夫婦だ。
椎菜自身が危惧しているように、遠距離恋愛になった程度で距離を置くまでになるとは到底考えられなかった。
相沢さんの案内で、女性用ラウンジに向かう。
螺旋階段を降りて長い廊下を歩いた先に入口はあった。
相沢さんは、カウンターの女性に二言三言告げると、私たちに一礼してどこかに行ってしまった。
ラウンジの向かいにはカウンターがあり、まだ髪が半乾きの美冬が行くと、ドライヤーとヘアアイロンを貸してくれた。
「ありがとうございます!」
美冬は笑顔でお礼を言うと、入口横の棚でドライヤーを使い始めた。
その横の棚では、椎菜がヘアアイロンを使っている。
「深月と華恋も後でアイロン使うよね?
どっちが先?」
サテンシャツパジャマの上下を着た深月と、キャミソールワンピースを着た華恋に話しかける椎菜。
すると、イチゴ柄の袖が挙がった。
「私でいいかな?
ミッチーにね、ちゃんと髪乾かさないと、今の姿写真撮ってオカズにするけどいい?なんて言われたのよ。
だから早く乾かしたいの、毛先だけだからすぐ終わるよ。
それにしてもオトコってほんと、思考回路どうなってんの」
「深月ったら、もう!
目の前の好きな子が着ているパジャマのボタン外したらどうなるか、ってこと想像したんじゃない?
お風呂上がりだから余計なんでしょ」
華恋の言葉に、ヘアアイロンでクルクルと髪を内巻きにしている椎菜も同意する。
「ホントだよね!
そこは深月に同意!
麗眞ったら、もう!
さっきお風呂上がりの私を見るなり『控えめに言ってエロい。今すぐそのTシャツもショートパンツも脱がしたいくらいだけど我慢する。だからこれだけは許して?』
そう言われて、開放される間際に割と強めに胸触ってきて!
私を煽るだけ煽って何したいの、ホントに!
我慢するとか本人は言ってたけど無理そうね、あれは。
麗眞の、私を開放する間際ちょっとどころか、かなり反応してたし」
知らぬ間に声が大きくなっていたらしい。
周囲の人には寝ている人もいるだろう。
椎菜が慌てて口を両手で塞ぐ。
すると、コンコンと軽いノックの音がして、さっきのフロントの人が入ってきた。
「ごめんなさい!
つい、大きな声を出してしまい……
ご迷惑、でしたよね」
椎菜がフロントの人に謝ると、返答は少しばかり意外なものだった。
「いいのよ。
貸し切りにしてあるから。
好きなだけゆっくりしていってね」
フロントの綺麗に肩のあたりで切り揃えられたストレートの茶髪が印象的なお姉さん。
彼女は私たちに綺麗な礼をすると、ラウンジのドアを閉めた。
「貸し切り、って」
さっき相沢さんがフロントの人に頼んでいたのはこれだったか。
ヘアアイロンは、椎菜から深月に手渡されていた。
「で?深月。
お風呂でも言ったじゃない?
未遂、って言葉だけで逃げようったってそうはいかないよ?って」
「ぶっちゃけどこまでいったのよ。
道明くんのアレは目にしたの?
大きさとか長さは?」
「目にはした、けど……
よくわかんなかった。
何しろ初めて見たし。
こんな感じなんだな、くらいで」
「最初はそうだよねー。
私もそうだったよ。
なんか不思議な感じだよね。
賢人のはスイッチ入る前はそんな大きさないんだけど、スイッチ入るとすごいの、
ここまでなる?ってくらい。
だからこそキツいから、しっかり1回で終わらせてくれるんだけどね」
「いいなぁ。
麗眞のなんて準備できる前からかなりの大きさなのよ。
それが更に増す、ってなるともうホントにキツくて。
最初と、その後5回位は事後に血が出たもん。
しかも復活するのも早いから、立て続けにできちゃうし、小野寺くんのとこみたいに1回かせめて2回で終わらせてほしい」
「麗眞くんはねー。
さっきお風呂と脱衣場でチラッと見えたけど、椎菜、太ももと背中、お尻の辺りにもキスマークあるし。
どんだけ溺愛してるのよ。
発情期のウサギみたい」
言われた椎菜本人は、全く気づいていなかったらしい。
半ば諦めたように、ショートパンツをめくって太ももに目をやると小さく息を吐いた。
「賢人はね、あんまり目立たせるの好きじゃないからって、胸の谷間の辺りにしかシルシつけないの。
しかも薄くしてくれるからありがたい。
恋人を溺愛してるどこかのカップルさんみたいに、あからさまなのは露骨で嫌なんだって」
まぁまぁ、と言うように華恋によって肩に手を置かれた椎菜。
まだ何か不満げなようで、頬をぷくっと膨らませていた。
話の矛先は急に、思わぬところから向かってくるものだ。
「理名はさ、
どこまでいったわけ?
拓実くんと」
「ふえ!?
どこまで、って、何が?」
「この家をよく知ってる人からね、食堂で理名と拓実くんが少しの間だけどキスしてたっていう目撃証言を得たのです」
「え?ちょっと理名、いつの間に?」
「ちょっと、報告してよねー!」
華恋や深月から、散々問い詰められた。
その輪から不意に外れた椎菜は、かかってきた電話に応答している。
「え?
うん、まぁ定番だけど。
私たちもやるの?
疲れたから見てるだけがいいなー。
うん、分かった。
行くよ、じゃあ、また後でね?
麗眞」
通話を切った椎菜は、私たちをぐるりと見回して言った。
「男性陣は卓球場で卓球やってるって。
拓実くんが強いらしい。
やらなくても見てるだけでいいって。
皆、行くー?」
「ここにいつまでもいるのもあれだし、行こうかなー」
「私はちゃっかり参加しようかな!」
そう言う琥珀ちゃんを筆頭に、皆でゾロゾロとラウンジを出る。
ラウンジを出ると、いつからいたのか相沢さんがいた。
「どうぞ。
広いお屋敷です。
迷うといけませんので、ご案内致します」
相沢さんにくっついて、卓球場に向かった。