病愛。【完】

私はわきめも振らずに逃げた。




とにかく逃げるしかなかった。





「伊藤!!」




後ろから颯の声が聞こえた。





私はそんな颯の声にも答えずに、ただ走っていた。





「伊藤!!」




颯が私の腕をつかむ。





「…離して。颯。」




私は静かにつぶやいた。





とにかく恭平から距離を…





「伊藤…どうして恭平の言いなりになってるんだよ…?」





そう聞いてくる颯に私は






「大事な人を護りたいから…!!」






そう、うつむきながら大きな声で言った。




ああ言わなきゃ、涙が出そうな気がしたから。





「なぁ、その大事な人ってのは誰のこと言ってるんだよ?」





その問いには私はすぐに答えられた。





「そりゃ颯と真と成美と…」





そこまで言うと、私はつまってしまった。




私は…言いかけたのだ。






『恭平』って…







「恭平もお前の大事な人で…護りたい人なんじゃねぇの?」




颯はそう言うと爽やかに笑った。





「俺はもう無理に俺にしろとは言わねぇから。でもたまには俺を頼れよ?」





颯は私の頭をポンポンとたたいた。





颯…




私は自分の胸に手をおいた。





私にとって恭平も…





どんだけひどい人だろうと大事な人なんだ___





逃げる前に恭平とちゃんと向き合おう。





颯のおかげでそう決意できた私だった。










そのころ。





「綾香を探してるんでしょ?私、綾香のことなら協力してあげるけど…?」




成美が、もう行動を起こしていたのだった…