病愛。【完】

「颯…?」





私は颯の変貌にすごく驚いた。





颯は悲しそうな目で私を見つめる。






そんな目で見られたら振り切ることなんてできなかった。






「颯。こういうの…やめてほしい。」






私は目を伏せながら精一杯言葉を発した。






颯と私の間に少しの沈黙が生まれた。





そして。






「なんでなんだよ…?」






か細い声を出す颯。





「颯…?」





「なんで…なんで…お前はいつも一人で抱え込むんだよ…」






「一人でなんか抱えこんで…」





「うるせぇ!!」






颯は壁を強くたたいた。





大きな音が廊下に響く。





私の目の前の颯にはもうあの優しい面影はなかった。






本気の目。






「…私は自分より大切なみんなを護りたい。」





私はそう言うと真っ直ぐ颯を見つめた。






「私のせいで大切なみんなが傷つく姿は…見たくない。」






「俺だって…!好きな奴が傷つく姿は見たくねぇよ…」







そう言うと颯は壁にあった手で私を抱きしめた。






「好きだ。綾香。大好きだ…」







え?





私は抱きしめられたまま固まってしまった。






好き…?






頭がよく回らない。





どういうことなのか…全くわからない。