病愛。【完】

成美side




ここにいるって…




私の中の何かが言っていた。




『ここに綾香と恭平はいる』って…





それは、綾香の声だったかもしれない。






ただただ私は…その部屋のドアをたたき続けた。




するとずっと黙っていた朝輝も…




「綾香先輩!!ここにいるんですよね?!」




とドアに向かってさけんだ。



私と同じで朝輝も綾香を心配する気持ちは変わらないんだ。




私と朝輝は二人でさけび…ドアをたたいた。




返答が返って来ることも、ドアが開かれることもなかったが…





「恭平…」




恭平の母親はそんな私達を見つめ…




ドアの向こうにいる息子に声をかけた。




「恭平?なんでこんなことするの?綾香ちゃんが苦しいの…わかってるんでしょ?」




優しく…しかし、少し強い口調で。




けれど…返答はやっぱりなかった。








「いつから…こんなことになったんでしょうね…」




恭平の母親は切なそうに言う。




「私が気づかなかったからよね…綾香ちゃんも…真くんも…」




そして恭平の母親はもう一度ドアの方を見て




「恭平をこんな風にしてしまったのは私のせいよね。」




ひどく自分を追い詰めてるようだった。




恭平の母親の顔を見てると…私はひどく心が痛んだ。







私もそうだ。




綾香を気づかってあげられなかったから…




綾香はこんなことになってしまったんだって。




「綾香…ごめんっ…」




気づくと私は涙を流して綾香に一生懸命謝っていた。




大好きな綾香に…







心から何度も謝った。




その声はもう届くことはないのに。