病愛。【完】

しばらくして恭平の母親は戻ってきた。






青ざめた顔を…しながら。



成美と朝輝の二人は恭平の母親の様子が変なことに感づき…




「どうしたんですか…?」




と恐る恐るたずねる。



すると恭平の母親は少し間を置き…





「今、鑑識の方から連絡があったの。あの、部屋についてた血は…」




恭平の母親は嗚咽をこらえながら絞り出すように声を出し…










「綾香ちゃんのだって…」













二人はそれを聞いた瞬間、ひどいショックを受けた。




初めは固まっていた二人も…






「ということは…綾香は…?」




「あの血の量だったら恐らく…即死だろうって…」




恭平の母親は涙を流し続けた。



だって、実の姉妹の子供を…自分の子供が殺してしまったんだから。



恭平の母親の悔やむ気持ちは相当なものだろう。




だが、二人にはそんな同情する余裕さえなかった。







「ふ、ふざけないでください!!どうして…綾香先輩が…!!」




大好きな綾香を失ったと知った朝輝は何度も「どうして」と言う。




そして親友の成美は…





「…」





一言も発さず…二人に背を向けた。




「成美さん…?」





成美のいきなりの行動に驚く朝輝。




成美は…真っ直ぐ前を見つめて、ゆっくりと歩き出す。




「成美さん?!」




成美は止まらなかった。




迷わずに…歩を進めていく。




成美は階段を上がっていった。







朝輝と恭平の母親がそれに続く。




「あの子…もしかして…」




恭平の母親は感づいたようだった。




成美はある部屋の前で立ち止まった。




「成美さん…?」




その部屋が誰の部屋かまだわからない朝輝。







そして…成美の次の行動は唐突だった。




バンッ!




成美はドアを叩きながらありったけの大声で叫んだ。




「綾香を返してよ!!アンタのせいで綾香の人生はめちゃくちゃよ!!」





そこで朝輝もこの部屋が誰の部屋なのか…ようやくわかったのである。