病愛。【完】

『私は…やっぱり誰一人として守れないんだ。』




私はそう心の中でつぶやくと、静かに涙を流した。







神様は意地悪。



いつも私に不幸な結末を与えるんだから。



いつも…私に涙を流させるんだから。



私が涙を流したくないことくらい、わかってるくせに。




「颯…」




私は何度目かの颯の名前をつぶやく。




颯は今、どうしているのだろう。



もう恭平に会った?




もう恭平の思い通りに…




私はそこまで考えると首をふった。




マイナス思考になっちゃダメだ。




大丈夫だから。



まだ…颯は…















「伊藤。」




ハッとした。




一瞬、颯が私を呼ぶ声が聞こえたから。




でも、すぐにそれが幻聴だということがわかった。




「そう…だよね。幻聴…」




私はなんだかとても虚しい気持ちになった。




幻聴でしか颯の声が聞こえないなんて。





嫌ってくらい、あんなに毎日顔合わせてきたのに…





「好きだよ…颯…」





今頃気づいたって遅いんだ。




だって、どれだけ颯のことを想っても…




颯は私の目の前にはいないから。




伝えられないから。





「もう嫌だよ…」




私は手で自分の顔を覆った。




自分が無力すぎて…悲しくて。




また、涙を流してしまった。