「はぁ…はぁ…」



オフィスから逃げ出し、少し人気のない
自販機の傍まで来ていた。


またやらかしてしまった事に変わりはない。


ため息を口から溢して逃げ出したオフィスに戻ろうと踵を返した。



「星村」



ここには居る筈の無い人物の声がして、
私はまた、肩を強張らせた。



「なななななんですか!?課長!」



「はぁ…。なぜ逃げる?俺はお前に何かしたか?」



その威圧は誰でも逃げ出したくなります!


心の中でそう言ってから、おそるおそる課長を見上げた。


その怖さに(もうこれは殺気?)またビビる。



「い、いえ…。槙村(マキムラ)課長は何も…」



その言葉を言った瞬間昨日のことを思い出して涙腺が崩壊しそうになる。


なんとか俯いたから見られてはいないと思いたい。


多分覗き込まれたら涙目だってバレる。



「あー…その、なんだ。…俺が悪かったよ。
だから泣くな、な?」



そう言って課長は私と距離を縮めた。


今度は前から手が伸びてきて、頭を撫でた。


「…よしよし。泣くな。女の涙は嫌いなんだ。
星村?だから、泣くな」



そう言った課長の声は、手は、優しくて。


泣いてなかったのに、涙がポロポロ落ちてきた。


『怖いんです!』

でも始めて課長の優しさを知った気がする。