午後七時頃、微かな足音が廊下に響いた。
パッと顔をあげれば、そこにはスーツに身を包んだ広瀬くんがいた。
目は私を真っ直ぐ見つめている。
口元は小さな微笑みを携えている。
そよ笑顔は、少し気まずそうな寂しそうなものだ。
胸が跳ねた。
同時に椅子から体を持ち上げた。
このソワソワする……なんとも言い難い気持ちに襲われて、私も彼と同じように微妙な笑顔を浮かべて固まってしまった。
ああ、本当は、予定では笑顔で彼を迎えて「久しぶり」と挨拶するつもりだったのに。
そんな気まずい雰囲気が流れている時に気付いた。



