「貴女が好きだ」
頭が、真っ白になる。
考えが全て吹っ飛び、無になりポカンとする。
両頬から温もりが消えた。
ずっとぶつかっていた視線が途切れた。
目の前に立っていた人影が消えた。
視界から広瀬くんが消えた。
広瀬くんの気配が消えた。
その場には、気付けば私一人になっていた。
ボンヤリとした脳内が、徐々に思考を取り戻していく。
現実の出来事を理解して、ハッとしたように唇を手で覆った。
い、今…キスされた。
キスされた。広瀬くんに。
脳裏に蘇る広瀬くんの視線に、くらくらと目眩がした。
どうすればいいのか分からない感情が渦を巻いて私を苦しめる。
怖くて、混乱して、泣きたくなってきた。
広瀬くんは私の事が好きだと言った。
本当に?いつから?
好きだから、彼氏がいると報告して、あんな目を私に向けてきたの……?
真っ直ぐぶつけられた心の声。
私に好きだと告げた彼は、今にも泣き出しそうだった。



