愛されたがり。





帰れますか?
俺、もうすぐ上がりなんで送りましょうか?

なんて気遣ってくれる朝風くんに、お礼を言って店を出た。



確かに、フランス料理だからだろうか、カップルや夫婦などのペアが来るばかりで、私のように若い女が一人でやってくるような店ではないのかもしれない。

実際、お一人様が苦手な女性は多いし、フレンチだと尚更だろう。


つまり、一人で来る若い女性客が少ない。

だから、余計心配してくれるのだろう。


だが、ご安心を。

私はワインの一杯や二杯、三杯で酔えるような女ではないのだ。



「森柴さん…いいなあ」



帰り道、夜空に溶かすような、小さな声で呟いた言葉。

それは本心で、一つの目標が定まったもの。



あの端麗な笑顔を私だけに向けてほしい。

あの色っぽい唇で、キスしてほしい。

男らしい腕で苦しいくらいに抱き締めてもらって、広い背中に手を回して温もりを確かめたい。

低音の甘い声で私の名を呼んで、私という女を求めてきてほしい。



そんな彼の姿を想像すると、感嘆の溜息が零れた。




ああ、なんて……良い夜なのだろう。