愛されたがり。





「今日は鴨が良いの入ってますよ」



メニューに悩んでいると、突然シェフの男が私に話しかけてきた。


少し癖毛の黒髪。

眼鏡の奥にある切れ長の瞳は射抜かれてしまいそうな目力を持っていて、薄く開けられた唇は色っぽい。

大きな肩幅と筋張った男らしい腕に、甘い声。

なんて、イケメンなのだろうか。


前、来た時には気付かなかった。



「……では、それで。えっと、オードブルはトマトファルシ。主菜は…鯛のポワレで…」

「エスカルゴも良いですよ」

「ええー、美味しいんですか?」

「美味しいですよ。 プリッとしていて歯ごたえがあって。皆さん初めは躊躇されるんですけどね、食べてみたらガーリックバターの風味とよくあってとても美味しいんです」

「ふふ、じゃあ今度食べにきますね」

「お待ちしてます」



シェフの男性は、森柴大知(もりしばたいち)さんというらしい。

27歳、独身で彼女もいないという。




これはなんだか…新しい恋の予感かもしれない?