「ん、んんー」


白いベットに薬っぽい臭い。

窓から見えるのは、見慣れない景色。

白い花、たぶん梅が綺麗に咲いていた。


「どこ?」


「病院」


独り言に返事が返ってきた。

あたしより声が低いから、男子かな?

まだひどい咳を抑えながら身体を起こすと、隣の隣のベッドにあたしと同じくらいの男子が本を読みながら、こっちを見ていた。


「誰で、すか?」


「あんたこそ誰?」


うっ……

無愛想……

あたしの苦手なタイプ。


「名前……」


「普通、聞く方が先に言うんじゃないの?」


なんなんだ、この人!!


「俺、織。織楓馬」


自分から言うんかいっ!


「で、お前は?」


「あたしは、大澤花です」


「じゃ、俺本読むから邪魔しないで」


そう言うと、織とか言うやつは、置いてあった本を取って、パラパラとページをめくった。


……って、


「何、その本」


「何って……」


織は、パタンと本を閉じた。



「図鑑」



「は?図鑑?!なんで?!変なの!つまんな!」


「別に、お前にどうこう言われる筋合いはない」


「そうだけど……!」


「じゃあ、邪魔するな」


ペラ、ペラ、ペラ、ペラ──

コチ、カチ、コチ、カチ、コチ、カチ──


「静かだ……」





『白部屋に 虚しく響く 時の声』


なんつって。