「どうして、思い出せなかったの……?」
彼女は、少し不安げに言う。
「……殺していたんだ。男の子は、その自分の母親を」
そう僕が小さく呟いた瞬間、彼女の胸元で揺れるネックレスが薄暗く灯る電灯に反射してキラリと光った。
「でも、男の子は自分で母親を殺したという事しか思い出せなかったんだ。どうして殺してしまったのかっていう理由とか、最後に母親と話した会話は何も思い出せなかった」
そして男の子は、自分という人間が分からなくなって、そのまま自分で自分の命を終わらせてしまった。
記憶を無くす前の自分と、後の自分がまるで別人に思えてしまって、今まで出会った人たちからひっそりと身を隠して。
「……っていう話なんだ。説明が下手で、ごめんね」
僕がそう言うと、彼女は小さく首を横に振った。


