何か飲み物持って来る



そう言って彼は、部屋を出て行った。


ーーーパタンーーー


部屋は、一気に静けさを取り戻した。





ーーーーーーーーーー
ーーーーー



昨日私は確かに、無くしたキーホルダーを探していた。


本当は、あそこに行くはずじゃなかった。


けれど暗かったせいか、私は迂闊にも、一本道を間違えてしまった。


辿り着いたのは、あの、桜並木。







「…はぁ…」







「何ため息なんかついてんだよ。」



ため息をついた瞬間、


目の前に、彼の顔が現れた。


「…へっ!?」


私は心底驚いて、間抜けな声を出してしまった。


「え、気づかなかったの?普通に入って来たのに…」


彼も、驚いた様子で言った。


そして、


「はい、紅茶。」


湯気の立つ、紅茶の入ったマグカップを差し出された。


「昨日、紅茶美味しそうに飲んでたから、好きかなと思って。」


何て言ってきた。


昨日は、無表情を通したつもりだったのに…。


すると今度は、


「大丈夫。多分分かったの、俺くらいだから。上手かったよ」


まるで心を見透かされているような感覚だった。


そういえば昨日もこの人、私の意図を組んでくれてたっけ。



そう言うのに、長けているんだな、と思い、


「ありがとう、頂きます。」


そう言って一口飲んだ。


「あ、それは俺が淹れたから」


何て後から付けたして来る。


昨日のはやっぱり、メガネの人が淹れたのかな。


少しだけ味が違かった。