詩織side


「…」


気がついたとき、目の前には白が広がっていた。


なかなか頭が動き出さなくて、ぼーっと、白を見つめていると、


「…ん、起きた?」


すぐ近くで、声がした。


その声で、私は一瞬で覚醒し、跳ね起きた。


「…な、ここは…え、…」


「落ち着け、昨日のとこだ。」


彼は銀の髪をうざったそうに掻き上げ、一つ欠伸をした。


「…綺麗」


私は思わずそんなことを口にした。


こんな状況でもそう思わされてしまうんだから、よっぽどな魅力だと思う。


昨日は暗かったし、あんまりちゃんと見ていなかったけど、


欠伸一つにさえ、彼は色気を漂わせる。


「何が?」


そう、私の目を見つめて来た。


「…え、あ、え、と…その、


雰囲気と言うか、綺麗な、顔立ち、だなと。」


私は慌てて、そんなことしか言えなかった。


「すみません、こんな時に。」


そう謝ると。


「いや、それはいい。ありがとう。




でも、綺麗、なんかじゃないよ。」


彼は一瞬、寂し気な顔をした。


私は、その表情の意味をまだ、理解していなかった。