「詩織、」
彼は私の元に来て、
「…バカだね、ちょっとくらい、抵抗すればいいのに、」
なんていいながら、
自分の着ていたジャケットを私にかぶせて、
ーーふわりーー
抱き上げたのが、分かった。
けれどもう既に、私は冷え切っていて、
「どう、し…て…、」
“どうしてここに?”
敵は?
ここは、あいつらのテリトリーのはずでしょう?
何で、あなた達がここに、
何て言葉は、声にならなかった。
けれど彼は、
「それはあとで。」
ちゃんと、心の声に、返してくれて、
ドアに向かって歩き出した。
彼の体温が、すごく、暖かく感じた。
人の熱を感じるのは、久しぶりで、
「あ…」
「…ん?」
“ありがとう”
その言葉が、言えたかどうか、
彼に届いたかどうかは、分からない。
けど、そんな、素直な言葉が、
自然と口から、出かかって、
そこで私は、
意識を、手放した。
