ーーーガチャンーーー


一人の男が、部屋に入ってきた。


そして、私の口の布をほどくと、


「お前、何を知ってる。」


そう、なんの前触れもなく聞かれた。


ーーー“何のこと?”


そう口を開こうとして、やめた。


そして、代わりに出た言葉は、


「何も、私は知らない。」


何のこと、に続くのはきっと、とぼけるな、だ。


だからあえて、別のを言ってみた。


最後くらい楽しみたい、なんて気持ちから出た言葉がそれなんて、


悲しくて、笑えた。


微かに笑みが顔に出てしまっていたのか、



「何笑ってやがる…」


ドスのきいた低い声が降ってきた。


しまった…なんて思って、


でも手遅れだな、なんて思って、


痛いのは、嫌だなぁとか、


やっぱりそんなことしか出てこなくて。