海吏side


1番最初に思ったのは、



驚く程、綺麗。



腰くらいまで伸びた、長い黒髪


華奢な体躯


真っ白で透けるような肌



そして次に思ったのは、



「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」


「…紅茶で」


俺らと平気で、会話していることへの、驚き。


俺らを誰だか分かってないのか、


免疫があるのか、


それとも…


どっちにしろ、俺らと初対面で、普通に言葉を交わしたのは、こいつが初めてだった。




そして、


名前を名乗って初めて気づいた。


綺麗な顔にある、やはり真っ黒な瞳は、


光がない。


それどころか、


焦点すら、あっていない。


俺らを見ているようで、全く見ていない。



“恐い”


俺がこいつに対して恐怖を抱くのに、そう時間はかからなかった。